アウン・サン・スー・チー党首が率いるミャンマーの与党、国民民主連盟(NLD)は10日、新大統領の候補として、スー・チー氏の側近、ティンチョー氏を指名した。

これは、憲法の規定で、外国籍の息子がいるスー・チー氏が大統領になれないためだ。

ミャンマーでは、国会の両院と軍がそれぞれ副大統領候補を指名し、そのうち1人が新大統領に選ばれる。NLDは過半数を超える議席を得ているため、ティンチョー氏が大統領になる可能性が高い。

ティンチョー氏は、スー・チー氏が設立した慈善団体の役員を務めており、経済関係の省庁にも長く務めた人物だ。スー・チー氏は大統領の就任を断念した形だが、「大統領以上の存在になる」と述べており、実権はスー・チー氏が握る可能性が高い。

ミャンマーでは、20年の歳月をかけて、軍事政権から民主化への移行が行われつつある。その中心的な役割を担い、国民からの支持が高いスー・チー氏が大統領になれないのは民主化の道が半ばであることを示してしる。

民主主義、言論・出版の自由、信教の自由などを認め、軍事独裁制や一党独裁制から複数政党制に移行することは、国民の幸福につながる。

中国との付き合い方が新政権の課題に

だがこの流れとは逆に、ミャンマーには独裁国家の影も迫っている。中国だ。

例えば中国は、昨年12月に決まったミャンマーの沿岸都市チャウピュに深海港を建設するプロジェクトを進めることで、ミャンマーへの影響力を強めようとしている。ミャンマーにとって中国は、巨大な隣国であり、最大の経済パートナーだ。

だが、ミャンマー国民の間では、中国への反発が強まっている。NLDも、これまで認可されたプロジェクトを大幅に見直す方針を示しており、これにはチャウピュの深海港プロジェクトも含まれている。スー・チー氏らNLDは、中国との付き合い方を模索している。

日本企業の進出も加速

中国に負けじと、日本企業も健闘している。

2015年9月には、日本とミャンマーが官民一体となって進める「ミャンマー・ティラワ経済特区」プロジェクトが開始。同年12月には、ミャンマー初の証券取引所がオープンしたが、その開設に日本企業は大きく協力した。

他にも、味の素が10日、ミャンマーで「味の素」の生産・販売を再開すると発表。三井物産も同日、ミャンマーでの肥料製造事業に参加すると発表するなど、日本企業のミャンマー進出は着実に進んでいる。

この調子で日本は、ミャンマーとの経済的な結びつきを一層強めるべきだ。そしてミャンマーの民主化を後押しし、自由や民主主義を大切にする国を増やしていくことが重要だ。

(山本泉)

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