岸田文雄外相は11日、フィリピンを訪問し、ドゥテルテ大統領と会談した。

両氏は、「国際法に基づく平和的な紛争解決が重要だ」との認識で一致。これは、南シナ海問題を巡る中国の主張を否定した、仲裁裁判所の判決を念頭に置いたものだ。

「仲裁裁判所の判決」とは、フィリピンが2013年、南シナ海で人工島を建設し領有権を主張する中国の活動を対象に、オランダ・ハーグの仲裁裁判所に提訴したことに対するもの。

今年7月、国連海洋法条約に基づき、「南シナ海で海洋進出する中国が主張する管轄権に国際法上の根拠はない」との判決が下された。

しかし、中国はこの判決を無視。判決後も、スカボロー礁付近のフィリピン漁船を追い出すという暴挙に出ている。

堂々と国際法を無視する中国に対して、「法の支配」を言葉で訴えるだけでは意味が無いようだ。

領土問題の鍵は「国際世論」

中国は、国際法を軽視する根拠として、「他国の支持を取り付けている」ことを挙げる。

判決後ASEAN(東南アジア諸国連合)10カ国による外相会議が開かれたときも、同様の問題が起きた。日本やアメリカを中心に、ASEAN共同声明に南シナ海問題をめぐる仲裁裁判所の裁定を盛り込もうとしたが、結局盛り込まれずに終わった。反対国があったためだ。

背景として、中国の王毅外相が2国間交渉で巨額の経済支援をちらつかせ、ASEAN各国の取り込みを図ったことがある。

つまり、これら領土問題では、外交による国際世論が鍵を握っている。

そんな中、それぞれ東シナ海と南シナ海で、中国と対立する日本とフィリピンが、協調する動きは評価できる。他のアジア諸国やASEAN諸国においても、中国の国際法違反に反対する包囲網が、早急につくられるべきだ。

中国包囲網は日本が主導すべき

そのためには誰かがリーダーシップを示さなくてはならない。

この地域でリーダーシップを発揮してきたアメリカは今、大統領選挙で動けない状態にある。その隙に、中国は覇権拡大への布石を少しでも打とうとしている。やはりここは、世界第三位の経済力を持つ日本が、中国包囲網形成をリードするべきだろう。

しかし、日本の目下、尖閣諸島沖では、今月に入り中国船による露骨な挑発行為が続いている。日本がこの状況を甘んじて受け入れるのであれば、他のアジアの国々は、日本と連携を取って自国を守れるのか確信できない。

日本がアジアでリーダーシップを取るためにも、まず、尖閣諸島沖で挑発行為を繰り返す中国に対し、断固たる姿勢を示すべきである。(片)

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