7月31日投開票の東京都知事選は、政策の議論があまり深まっていない印象を受ける。

フジテレビ系番組「バイキング」(7月19日放送)には、元総務相の増田寛也氏、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏、元防衛相の小池百合子氏が"主要3候補"として出演し、互いに質問をぶつけ合う様子が生放送された。

この中で、小池氏が街頭演説で、がん手術をした鳥越氏について「病み上がり」などと発言したことを鳥越氏が問い正すと、小池氏は「言ってないです」と発言自体を否定。しかし鳥越氏に「がんサバイバーに対する大変な差別」と責められると、「もし言っていたならば、失礼なことを申し上げて恐縮です」と謝罪した。その後、小池氏は「これが選挙なんですよ、坂上さん」と司会に話を振るなど、開き直る一面も見せた。

こうした都政とは関係のないやり取りばかりが目立っている。

この3候補の中で比べれば、小池百合子氏の政策は、「保育園設置の規制緩和」や、2階建て通勤電車による「満員電車ゼロ」など、増田氏や鳥越氏よりも具体的で期待が持てるものが多い。しかし中には、次のような矛盾もある。

小池氏の公約「都議会の冒頭解散」はなんのため?

小池氏の公約の一つに、「都議会を冒頭解散する」とある。しかし地方自治法178条によると、都知事が都議会を解散できるのは、都議会が知事の不信任を議決した時だけだ。小池氏が公約を実現するには、不信任決議される必要があるが、都民に選ばれたばかりの知事に、都議会議員が不信任決議をつきつける可能性は低い。これを公約にして何の意味があるのだろうか。

「クールビズ」「自然エネルギー」で環境問題は解決できるのか

また、エコ政策に力を入れている小池氏は、環境大臣を務めた時に大々的に提唱した「クールビズ」をいまだにPR文句にしている。また、発電については、「原発を超えて、太陽光発電、風力発電、地熱など自然に満ち溢れたエネルギーを使うべき」としている。

だが、原発は二酸化炭素をほとんど出さずに電力を供給できる。一方、環境に優しそうに見える自然エネルギーは、耐用年数が短い太陽光パネルの廃棄問題など、普及までにはさまざまな問題を抱えている。国防大臣であったこともある小池氏なら、国防の観点からも原発の必要性が分かるはずだ。クールビズで温暖化対策を強調するなら、原発の必要性を訴えるべきではないか。

クールビズも自然エネルギーも間違っているわけではないが、問題の本質からはズレた主張と言える。

「冒頭解散」も「クールビズや自然エネルギー」も、有権者に与える印象を良くするためだけの「見せかけ」のものではないかと疑いたくもなる。

政策の中身で判断する選挙に

同じ女性候補で、幸福実現党から立候補している七海ひろこ氏は、東京都が抱えるさまざまな問題について、本質をついた具体的な政策を提案している。

たとえば経済政策では、東京でビジネスをやりやすい環境をつくるために、固定資産税の減免、特区を活用した法人税の軽減を進めると主張。また、税金が高く消費が冷え込んでいる状況を改善するために、相続税の廃止、「消費税5%特区」実現を訴えている。

さらに、待機児童ゼロに向けて、「規制緩和」路線を貫き、働く女性が利用しやすいように、都営地下鉄の構内やその付近に託児所を設けたり、エスカレーター、エレベーター、授乳所の設置を奨励するなど、都民に寄り添う政策を示している。

小池氏はこれまで、5つもの政党を渡り歩いてキャリアを重ね、「政界渡り鳥」と揶揄されている。さまざまな政治家との人脈もあるが、確執もある。

小池氏とは対照的に、七海氏は「しがらみや既成政党の利害・打算に基づく政治ではなく、透明性の高い都政を実現できる」と主張している。"主要3候補"だけではない、「新しい選択」に期待したい。

【関連サイト】

七海ひろこ公式サイト

http://nanami-hiroko.net/

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2016年7月22日付本欄【都知事選】"主要3候補"って誰が決めたの? その姿は「国営マスコミ」

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2016年7月18日付本欄 【都知事選】公約見たら、保守だった七海ひろこの都政政策

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2016年7月16日付本欄 【都知事選】東京の「待機児童問題」どう解決するべき? 各候補の政策を比べてみた

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