東京都のトップを決める戦いが始まった。各候補者は炎天下の東京で、有権者に政策を訴えている。
首都・東京が抱える問題は、東京オリンピック、少子高齢化、災害やテロ対策など、多岐にわたる。さまざまな課題の中でも特に女性から注目されているのが、保育所の空きを待つ「待機児童」の問題だ。
東京では待機児童が8000人を超えるとみられており、全国最多だ。今年の2月中旬には、「保育園落ちた日本死ね!」という匿名ブログが注目を集め、国会でも議題に上るなど、都市部では深刻な問題となっている。
都知事選に出馬している各候補の、子育て・少子化対策の政策を比較してみよう。
最も具体的な政策を掲げているのは?
自民党が推薦する元総務相の増田寛也氏は、以下の政策を掲げている。
- 「東京都が区市町村をもっとバックアップし、予算も増やさないといけない(記者会見より)」
- 「待機児童解消・緊急プログラム」を策定し、8000人の待機児童を早期解消
- 妊娠・出産・産後・子育てを切れ目なく支援する「子育て世代包括支援」の構築
野党4党の推薦候補である、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏の政策は以下の通り。
- 「まずは喫緊の必要性がない公共事業は後回しにするなど、予算の見直しを行い、少子高齢化対策に予算を回したい(記者会見より)」
- 保育所の整備をはじめ、あらゆる施策を通じて、待機児童ゼロを目指す。
- 子育て・介護に優先的に予算を配分する。保育士の給与・処遇を改善する
元防衛相の小池百合子氏は、一歩踏み込んだ政策を掲げている。
- 「待機児童ゼロ」を目標に保育所の受け入れ年齢、広さ制限などの規制を見直す。
- 保育ママ、保育オバ、子供食堂などを活用して、地域の育児支援態勢を促進する。
- あらゆる都内遊休空間を利用し、保育施設、介護施設不足を解消。同時に、待遇改善等により保育人材、介護人材を確保する。
幸福実現党公認の七海ひろこ氏が掲げる政策は、より具体的だ。
- 都営地下鉄構内・付近に託児所を設ける。エスカレーター・エレベーター・授乳所などの設置を奨励する。
- 高層ビルをつくり、下の階には、商業の店舗やオフィス、上の階には、保育園、幼稚園などを併設し、空いている空間を有効利用する。
- 出産を希望する人が、経済的負担を理由に子供を諦めなくても良い都市を目指し、不妊治療や不育症に対する支援を実施・拡大する。
やはり「子育て」は女性の得意分野?
増田氏、鳥越氏はともに、「子育て・介護支援のために予算を増やす」と言っているが具体的な解決策や提案が見えてこない。「保育士の待遇改善」など聞こえはいいが、ただのバラまき政策になる可能性もある。
小池氏の政策は、規制の見直しや遊休空間の活用など、やや期待が持てそうではあるが、七海氏の政策は、ビジョンがより明確かつ具体的で、子育てと仕事の両立に悩む女性に寄り添った政策と言えるだろう。
たとえば、「都営地下鉄構内・付近に託児所を設ける」という政策は、ぜひ早くに実現してもらいたいと考える働くママは多そうだ。
ただ、現在の認可保育所の設置基準では、保育所に調理室や医務室を備える必要がある上、部屋の広さについても細かく決められている。東京都独自の制度である「認証保育所」の設置基準は、「認可保育所」の条件よりは緩和されているが、地価が高く、人口も多い東京では、安全基準を担保できるという条件のもと、もう一歩、規制緩和を進めても良いのではないか。
待機児童を減らし、働くママを応援するために必要なのは、安易なバラまき政策ではない。
むしろ、なるべく税金をかけずに待機児童を減らすための規制緩和、そして七海候補が提案しているような新しい発想で、都市計画そのものを変えていくイノベーションが必要だ。
【関連サイト】
七海ひろこ公式サイト
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