東電が原発事故を防げなかったことが罪とされるのかどうか、法廷で初めて争われる。

東京電力の福島第一原発事故をめぐって、東電の旧経営陣である勝俣恒久元会長ら3人がこのほど、業務上過失致死罪で強制起訴された。

検察側は証拠不十分などで、これまで2度にわたり3人を不起訴処分にしていたが、昨年7月、検察審査会が、「強制的に起訴すべき」とした。

裁判の最大の争点は、「巨大津波による原発事故の事前予測が可能だったかどうか」について。起訴状などによると、3人は、事前予測が可能だったにもかかわらず、適切な措置をとらなかったとされている。

すべてを東電の責任にはできない

果たしてこの見方は正しいのか。

例えば、原発事故の賠償規定を定めた、原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)の第3条には、次のような文言がある。

「原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない」

東北大震災はM9と、国内観測史上最大の規模。まさしく、「巨大な天災地変(又は社会的動乱)」と言えるものだった。予測可能なレベルを超えており、東電に事故の全責任を問うのは無理があるというのが、普通の感覚だろう。

市民感覚の判断には限界がある

審査員は専門家ではなく、くじで選ばれた11人の国民。強制起訴には、2回にわたる審査でそれぞれ8人以上の賛成が必要だった。

審査員の役割は、検察官の不起訴処分が、国民の「常識」に合っているかどうか判断するというもの。ただ、その「常識」は、マスコミなどが作り出す空気や、感情に流されやすいとも言える。

国民の中にはまだ「東電悪玉論」が根強く残っているようだが、法廷においては冷静な議論がなされることを願いたい。

(冨野勝寛)

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