2015年の農林水産物・食品の輸出額が前年比21.8%増の7452億円となり、3年連続で過去最高を更新したことを、このほど農林水産省が発表した。

着実に高まる日本産品の需要

日本の農林水産物・食品の輸出額は2012年までは5000億円前後にとどまっていた。

だが、2013年に和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたことで、日本食への評価が世界的に高まった。加えて、現在は円安で日本産品に割安感が出ていることや、東日本大震災後に輸出先の国が行っていた、日本の農産物の輸入規制を緩めたことも追い風になったと見られている。

こういった外部環境の要因から、輸出額の増加は円安による見かけ上のもの、という見方もある。

しかしこれに対して、農林水産省は、「食品輸出は円建ての代金決済がほとんど(82.1%、ジェトロ調査)」「輸出数量は着実に伸びている」「日本産食品は一般に価格より品質で選ばれている」と指摘。輸出額の増加は、実際に日本の農水産物の需要が高まっていることの表れだとしている。

この状況を受けて、政府は、農水産物の輸出額を2020年に1兆円にするという目標を、前倒しで実現する方針だ。

「TPP発効で農産品の輸出が増える」

日本の農業を取り巻く問題点として、小さな規模の農家を守るために多くの保護が行われているため、企業などの新規参入が阻まれていることが挙げられる。ほかにも、輸出しても高い仲介コストがかかり、手取り価格が低い状況や、消費者の食の安全に対する関心の高まりから厳格化する傾向にある各国の安全基準を満たさなくてはならない、などの状況がある。

上記のような問題があり、貿易環境が十分とは言えない今の環境で、今回のようなこの伸び率である。過去最高の輸出額達成は、「日本産品は高い潜在能力を有し、世界的な競争に充分対応できる」ことを裏付けている。

4日に署名式を迎えた環太平洋パートナーシップ協定(TPP)は、協定発効のための国内手続き整備に移っているが、全国農業法人へのアンケートによると、「TPP発効で農産品の輸出が増える」という見通しは7割に上ったという(5日付日経新聞)。日本の高品質な農水産業をより強めるために、TPP発効後を見すえて、国内の規制緩和や法整備を早めることが求められる。

自由化による発展と日本の精神性

季節の移ろいや年中行事との密接なかかわりのある日本の食文化のもとには、「豊作や大漁は神の恵みであり、感謝とともに、収穫したものを一番に神に捧げる」という神事がある。

日本の農作物が世界に広がる時代が近づきつつある現在、こういった日本の「収穫への感謝の心」をもう一度振り返ることも有意義だろう。

(HS政経塾 表奈就子)

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幸福の科学出版 『豊受大神の女性の幸福論』 大川隆法著

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