いまだに原発事故が残した"爪あと"は大きく残っている。

福島県はこのほど、2015年国勢調査の速報値(10月1日時点)を公表した。国勢調査が行われたのは、福島第一原発事故以来初めて。

調査結果によると、2015年の県人口は2010年より11万5458人少ない191万3606人。その減少幅は5.7%と、過去最大を記録した。

地域別でみると、原発事故で避難指示区域に指定された地域が多い相双地方では、42.9%と人口が大幅に減少。特に、富岡、大熊、双葉、浪江の4町は人口ゼロと算出されている。

震災関連死が直接死を上回る

避難生活も長期化している。

福島県では今も約10万1千人が県内外で避難生活を強いられたままだ。また、福島県内で震災関連死と認定された人は28日までに2007人。地震や津波で亡くなった直接死の1604人を上回る。その背景には、自宅にいつ戻れるか分からないなど、避難民の不安感があり、自ら命を絶つ者も多い。

震災で財産や家族を失った、避難生活者の悲しみは察するに余りある。ただ、その元をたどれば、政府の判断ミスに行き着く。

年間20ミリシーベルトに科学的根拠なし

震災当時、民主党は福島第一原発から20キロ圏内を避難指示区域に指定し、年間20ミリシーベルトという基準を設け、福島県民の帰還条件にした。しかし、国連の科学委員会や国際原子力機関(IAEA)は、年間100ミリシーベルト以下の被ばくでは、「人体に影響は見られない」としている。

20ミリシーベルトという基準には、科学的根拠は何もない上、放射能漏れによる死者もゼロだ。

冷静さを欠いた菅元首相と危険を煽ったマスコミ

また、菅直人元首相は、冷静な判断を欠き、現場を混乱に陥れた。

震災後、出版された菅氏の著書『東電福島原発事故 総理大臣として考えたこと』には、こう記されている。「東日本は放射能という見えない敵によって占領されようとしていた。(中略)いつしか私は、原子炉すべてが制御不能に陥り、首都圏を含む東日本の数千万人が避難する最悪の事態をシミュレーションしていた……」。

菅氏には、「原発は危険だ」というある種の強迫観念があったことが分かる。

マスコミにも責任がある。

福島の状況を過大に報道し、危険を過剰に煽ったことで、福島県産の農畜産物が買い控えられ、同県への旅行客は激減した。「報道被害」という名の「風評被害」額は1.3兆円に及んでいる。

避難生活者は、こうした「人災」によって生まれたものだ。「2015年は愛する故郷で年を越したかった」。こうしたやりきれない思いを抱えている避難民も多いことだろう。政府は科学的事実に目を向け、強制避難指示の誤りを認め、福島安全宣言を出すべきだ。

(冨野勝寛)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『天使は見捨てない』 大川隆法著

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幸福の科学出版 『放射能・原発、これだけ知れば怖くない!』 高田純著

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