米調査報道記者のシーモア・ハーシュ氏がこのほど、米軍の統合参謀本部がオバマ政権のシリア政策を潰すために、シリアのアサド大統領やロシアのプーチン大統領を、秘密裏に支援していることを報じた。

事の発端は2013年夏。「アサド政権が倒れたら、混乱が広がり、過激派集団がシリア内を横行する」といった趣旨の報告書が、米軍諜報部から統合参謀本部に上がってきた。報告書は、オバマ政権がシリア内の穏健派の反アサド勢力に武器を供給していることに警鐘を鳴らしたわけだ。

「命令違反」ぎりぎりの綱渡り

背景にあるのは、穏健派と呼ばれる「自由シリア軍」などは弱小勢力であり、活動資金を得たり、他のグループとの協力関係を築いたりするために、「イスラム国」やアルカイダに武器を渡している可能性だ。

そのため、統合参謀本部は、アサド政権が倒れてシリアが過激派集団の手に落ちないように、オバマ政権が知らないところで、"努力"を続けてきたという。

ロシアやドイツ経由でアサド政権に軍事情報を渡したり、「反アサド勢力に武器を供給せよ」というオバマ政権の命令に対して、朝鮮戦争時から残る使い物にならない武器を供給するなど、「命令違反」ぎりぎりの綱渡りを続けてきたというのだ。

新しい正義が求められている

米軍の指導者層は、オバマ氏がいまだに米ソ冷戦の世界観を引きずっており、シリアの状況を改善するより、ロシアに対抗することに気をとられていることに懸念を示している。中東で協力し合えるはずの米露が、オバマ氏の世界観が変わらないために、協力関係を築くことができないでいるのだ。

もちろん、空爆などによって「イスラム国」を殲滅すべきではないが、米露が協力し合うことができなければ、シリア内の各勢力を調停できる段階にすらたどり着けない可能性が高い。

現在、国際社会における「正しさ」は、各国の指導者の思想、信条、世界観によって創りだされ、世界に大きな影響を与えている。

だが、25年前の米ソ冷戦時や、それ以前に通用した世界観や正義の基準も、時代とともに変化せざるを得ない。さらに現代は、世界情勢が急速に変化しつつあり、それに伴い、「何が正義であるか」が分かりづらくなってきている。

一部の指導者たちが、古い世界観と正義観を持ち続け、変化に対応できないままであれば、今後も世界中で混乱が続いていくだろう。世界はいま、新しい正義の基準を必要としている。(中)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『正義の法』 大川隆法著

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