米環境保護局(EPA)は、独フォルクスワーゲン(VW)の排ガス試験不正問題をめぐり、傘下の高級車ブランド、ポルシェやアウディのディーゼル車でも違法ソフトが見つかったと発表した。VW社はこのことを否定しているが、もしEPAの指摘が事実であれば、VWグループのさらなる信頼失墜につながる。

痛すぎる不正の代償

VWのディーゼル車には不正ソフトウェアが搭載されており、米環境保護局(EPA)の試験の時だけ排ガス量を減らす装置を作動させていた。これは、環境にやさしいイメージが重要な自動車業界において、史上最悪の不祥事といえる。

「VW」の不正問題対応に追われる同社は、7~9月期の営業損益で34億8000万ユーロ(約4624億円)の損失を計上したと10月に発表した。(前年同期は32億3000万ユーロの黒字。) アナリストの多くはVWが今後もさらにリコールや罰金、訴訟費用などの資金を支払うことになると予想している。

「燃費」と「低水準の排ガス」という、本来、相反する2つの要望を同時に達成するためには、不正ではなく技術開発が必要だ。しかし、目先の利益のために不正行為をすることで、世界中の消費者の信頼を損なうという、あまりにも大きな代償を払う結果となった。

ドイツ一国に依存する欧州経済の危うさ

EUで最も強い発言力を持ち、経済を引っ張っているのは言うまでもなく、ドイツだ。フランスは経済的にも政治的にも弱体化しており、イギリスはEUからの脱退を議論し続けている。

他のEU諸国の経済が伸び悩む中、ドイツの経済が好調を維持していたのは、ユーロおよびユーロ圏外への輸出が黒字であるからだ。今回の不祥事で、ドイツの基幹産業である自動車の販売が減少すれば、欧州経済全体に与える影響は大きい。

EUのドイツ以外の国では、経済の停滞で十分な技術開発投資ができていない。ドイツのメルケル首相は自国にも他国にも緊縮財政を求めているが、あまりに厳しい緊縮財政の中からは、発展は生まれない。今回のVW社の不祥事は、ドイツ一国に依存する欧州経済への警告と受け止める必要があるのではないか。(真)

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