四国電力の伊方原発(画像は wikipedia より。)
愛媛県の中村時広知事が26日、四国電力の伊方原発3号機の再稼働に合意した。今後順調に点検作業などが進めば、同原発はすでに再稼働している九州電力の川内原発に次ぎ、年明け以降にも再稼働する見通しだ。
中村知事は同日の記者会見で、福島第一原発事故を例に挙げ、同事故の原因は津波による冷却装置の電源喪失だと指摘。「津波の被害の点について、伊方原発の場合、福島原発と同じことは起きない」と、伊方原発の安全性を強調した。
また、「日本は自国でエネルギー資源をまかなえない」「四方を海に囲まれており、送電線を通じて他国から電力を買うことができない」と、エネルギー自給の面からも、再稼働合意に至った経緯を述べた。
今回の合意は大変喜ばしいことだ。中村知事の発言を踏まえつつ、原発が日本にとって不可欠な理由を考えると、大きく3点ある。
原発停止による燃料費の負担増
まずは、経済面のメリットだ。
原発停止によるエネルギーの不足分は、火力発電で補われている。経済産業省によると、火力発電に使われる燃料費の増加額は2011年度から今年度までの5年間で、累計14.7兆円に達する見込み。国民1人あたり12万円もの負担増になるという。
原発再稼働が進まない限り、企業や家計へのダメージは増すばかりだ。
老朽化が進み、トラブルが絶えない火力発電所
頼みの火力発電のリスクも無視できない。
国内の火力発電所は耐用年数がすぎるなど、老朽化が進み、ボイラーの蒸気漏れなどのトラブルが多発。定期点検を繰り延べて運転を続行させたため、運転停止が相次いでいる。
今冬も火力発電はフル稼働が予想されており、綱渡り運転が続くようだ。
エネルギー安全保障を脅かす「中東の政情不安」と「中国の軍事リスク」
次に、安全保障上のメリットだ。
火力発電に使われる原油や天然ガスの主な輸入先は、政情不安が続く中東。今後の国際情勢次第で、原油価格が高騰したり、ホルムズ海峡が封鎖され、日本に燃料が届かなくなってしまう事態は起こり得る。
石油輸送ルートである南シナ海では、中国が軍事覇権を強めており、日本はエネルギー安全保障上のリスクに常にさらされている。日本のエネルギー自給率はわずか4%であることを考慮しても、自国で電力を賄える原発のメリットは計り知れない。
脱原発の風潮はいまだに根強いが、原発稼働のリスクより、原発ゼロのリスクの方が大きい。今回、伊方原発が再稼働合意に至ったものの、まだまだ国内の大多数の原発は止まったままだ。他の原発の速やかな再稼働を求めたい。(冨野勝寛)
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