7月14日に合意を見たイラン核協議を承認する米議会の投票が9月に行われる予定だ。米ハフィントン・ポスト紙がこのほど、合意を後押しするオバマ政権と、それに反対する共和党議員の見解を紹介した。
米オバマ大統領は、核合意の条文を履行させ、イランに対する経済制裁を解除する予定だが、9月の議会投票でこれが覆される可能性がある。上下両院でそれぞれ3分の2以上の議員が核合意に反対票を投じると覆される。
イラン核合意の弱点とは?
米議会で過半数を誇る共和党の中には、核合意に対して懸念を抱く議員が多い。彼らが合意に批判的な理由は大きく分けて二つある。
まず、核開発が行われていないことを調査・査察する国際原子力機関(IAEA)とイランの間で、調査・査察方法などに関する合意が存在する。しかし、この合意の内容は公開されていない。米議員たちは、どのように調査が行われ、IAEAがどの施設を査察できるのかすら分からないまま議会投票を行うことになる。
また、イランの核開発を制限する合意の期限は10~15年であり、その後、イランの核武装を止めるものは何一つないことも挙げられている。
「外交か戦争」は正しい二者択一か?
これらの懸念をよそに、オバマ氏は「我々は外交か戦争かの選択に迫られている」と発言し、もし議会の承認を得ることができなければ、イランの核開発を止める方法は戦争しかないと迫っている。
これに対し、共和党のジョン・マケイン上院議員は、「選択肢は承認と戦争の二つだけではない。イランに圧力をかけ、より良い合意を引き出すこともできるはずだ」と反論している。
イランが核兵器を引き続き開発するシナリオは二つ考えられる。一つは、核合意が承認されない可能性。もう一つは、イランが調査団から各施設を隠して、秘密裏に核開発を進めることだ。オバマ氏は前者を、議員たちは後者の可能性を懸念している。
「核化」する可能性がある中東の混乱
もしシーア派のイランが核兵器を所持した場合、スンニ派のアラブ国家も黙ってはいないだろう。サウジアラビアやクウェートなども核武装に走ることが考えられ、中東で核競争が起きる可能性がある。
混沌とした中東に「核兵器」という新たな要素を組み入れて良い結果になるとは思えない。
イランが核兵器開発を諦めれば、この最悪のシナリオは回避できるかもしれない。しかし、同国が核開発を強行した場合、世界はどうすべきだろうか。その答えが、新たな中東戦争の火種となるかもしれない。
第三の道は?
イランの核問題は、欧米やイスラエルとイスラム圏との対立、そしてスンニ派とシーア派の対立など、中東を混乱に陥れている根本問題の一面に過ぎない。
やはり諸勢力の対立の原因となっている宗教対立を解決しない限り、中東の紛争が終ることはないだろう。(中)
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