1月下旬に即位したサウジアラビアのサルマン国王(79)はこのほど、ムクリン皇太子(69)を解任し、副皇太子だったムハンマド内相(55)を新たな皇太子に指名した。また、新たな副皇太子に、国王の息子で30代前半とされるムハンマド国防相を指名した。なお、ムハンマド内相は国王の実兄の息子で甥にあたる。

このように、サルマン国王は即位後、アブドラ前国王派を遠ざけ、近親者を中心に権力基盤を固めている。一連の体制の変革は、外交や安全保障上の課題に対処するための新たな体制づくりを目指したものだ。

サウジアラビアは親米国家だが、1月に死去したアブドラ前国王は、オバマ米大統領の融和的な中東政策に不信感を示していた。サルマン国王も、アメリカに頼らない自主防衛の体制への転換を図ろうとしているようだ。4月29日、アラブ連盟首脳国会議でアラブ合同軍を創設するとの声明を発表したのも、その一環だ。

現在の中東地域での対立軸は、主に、イスラム教国対ユダヤ・キリスト教国、そして、イスラム教同士のスンニ派対シーア派、中でも、サウジアラビア(スンニ派)対イラン(シーア派)の対立が顕著だ。その対立がシリアやイエメンなどでも代理戦争という形で表れている。サウジアラビアにとって、安全保障の確保は必須である。

スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、2014年のサウジアラビアの軍事費は世界第4位で、日本の2倍近い808億ドル。前年比17%増で、軍事費の対GDP比も10%を超えている。サウジアラビアがこれだけ多くのの軍事費を確保でき、中東地域に大きな影響力を持つ理由は、莫大な石油埋蔵量と石油生産能力を持つためだ。なお、世界の主要国のエネルギー消費において、石油は約3割を占める。

今後、サウジアラビア対イラン、そこから派生して、ほかの地域でスンニ派対シーア派の対立が、新たな紛争となって現れる可能性もある。先月からのイエメン攻撃で両国の対立が明確化し、サウジアラビアとイランの間で直接的な衝突へと発展することもあり得る状況だ。

また、最近イランは、欧米諸国などとの核開発に関する協議で、枠組みの大筋合意に至ったが、イランがいつ何時裏切ったり、開発を秘密裏に続ける可能性は十分残っている。イランが核兵器を持てば、サウジアラビアも核兵器を持とうとするだろう。今後の中東情勢は、緊張状態が続くサウジアラビアとイランの動向で、大きく変わってくる。今後も、両国の動きを注視していく必要がある。(泉)

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