中国の人権状況に関する2014年度報告書が、このほど、アメリカ議会の「中国に関する政府調査委員会」によって公開された。今回は、北朝鮮の亡命者に関する報告に焦点を当ててみる。

国連は去る2月、北朝鮮の人権状況に関する報告書を公開した。ここでは、北朝鮮から逃れてくる亡命者を、中国が北朝鮮に強制送還していることを非難しており、中国のやっていることは、北朝鮮の人権侵害を助長する行為に相当するとしている。

今回公開された米議会の報告書も、亡命者は北朝鮮に送還されたあと、拘束、拷問、処刑、その他の非人道的な扱いを受けていると指摘。しかし、中国は依然として、北朝鮮との1961年の「中朝有効協力相互援助条約」と、1986年の「国境地域業務協定」をもとに、国境を渡ってくる北朝鮮人が違法移民であるという理由で送還を続けているという。

中国側のこういった行為は、1951年と1967年に国連で採択された「難民の地位に関する条約と規定」や、国連の「拷問等禁止条約」に明らかに反する。これらの条約には、「出身国や地域で条約の定義する拷問や非人道的扱いや刑罰が行われると信じるに足りる根拠がある場合」難民を送還することを禁止することが明記されている。

また、米議会の報告書によると、北朝鮮から亡命する7割が女性であり、中国の強制送還方針のため、彼女達は中国内で法の庇護を得られず、暴力を振るわれたり、人身売買業者の手に落ちることが多いという。同報告書は、中国が国連の「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」のもと、こういった行為を取り締まる義務があることを指摘。さらに、子供がいる北朝鮮の女性亡命者の強制送還に関しても、国連の「童子の権利に関する条約」のもと、親子を引き離すことが禁じられていることにも触れている。

これらの報告書を読めば、中国には常任理事国として国連安全保障理事会に名を連ねる資格がないことは明らかだ。世界の多くの国々が共有し、近代国家の基盤になっている自由や人権と言った価値観を守らないだけではなく、それを積極的に否定する国が、常任理事国であるべき道理はない。(中)

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