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新型コロナウィルスの起源をめぐり、コロナは武漢ウィルス研究所から流出しただけではなく、「研究所で人工的につくられた」という人工説の信憑性が高まっていると指摘する英ジャーナリストの寄稿記事を、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが2月28日(現地時間)に掲載しました。

《詳細》

英ジャーナリストのニコラス・ウェイド氏が紹介したのが、ドイツの生物学者ヴァレンティン・ブルッテル氏らが2022年に公開した論文です。これによると、ウィルスを人工的につくる場合、特定のDNAをあとで効率的につなぎ合わせられるように等間隔で切断する傾向性があることに着目。制限酵素と呼ばれるものを使って、人工ウィルスと自然のウィルスをそれぞれ切断して比較したところ、人工ウィルスの形跡が数理的に示されたというのです。

この論文が公開されると、研究所起源説を否定する研究者から、一方的に揶揄されました。しかし、「ユーエス・ライトトゥーノー」の記者が情報公開請求で最近入手したDEFUSE計画(後述)の草稿などによると、ブルッテル氏らの指摘が正鵠を射た見方であることが分かり、「コロナ人工説」の信憑性がここに来て高まっています。

DEFUSE計画とは、米中の研究者が2018年にアメリカ国防高等研究計画局(DARPA)に提出されたものです。同計画では、ウィルスの感染力を高める「フーリン切断部位」を人工的に挿入し、ワクチンの開発につなげるなどの目的で助成金を申請しました。

その後コロナ・パンデミックが起きると、コロナのDNAに自然発生したとは考えにくいフーリン切断部位が見つかり、どういう経緯でそれが紛れ込んだのか、多くの学者を悩ませました。しかしDEFUSE計画には、SARSウィルスにフーリン切断部位を人工的に挿入すると明記しているため、これに基づけば、その謎がたちまち氷解します。

結局、DEFUSE計画はDARPAに申請を却下され、プロジェクトは実施されなかったと、申請したエコヘルス・アライアンス代表のピーター・ダスザック氏は昨年述べました。しかし、共同申請した中国・武漢ウィルス研究所研究員の石正麗(せき・せいれい)氏が、中国政府の資金を別途確保し、密かに研究を進めたのではないかと、ウェイド氏は指摘します。そうすれば、コロナが人工的につくられ、研究所から漏れたという説が成り立つことになります。

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