《本記事のポイント》

  • 台湾への異常なレベルの威嚇
  • かつてない規模の選挙介入
  • 民進党勝利を受けて高まる軍事的危機

元航空自衛官

河田 成治

河田 成治
プロフィール
(かわだ・せいじ)1967年、岐阜県生まれ。防衛大学校を卒業後、航空自衛隊にパイロットとして従事。現在は、ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)の未来創造学部で、安全保障や国際政治学を教えている。

イスラエルとハマスを中心とした戦争は、イランの支援を受けるイスラム武装組織による中東での広範囲な戦いへと拡大しており、短期的に収束する見込みは立っていません。加えてイランがバックに付くイエメンのフーシに対する米英の空爆が開始され、情勢はいっそう緊迫してきました。

イラン自身も昨年12月23日には、日本企業所有のタンカー「ケム・プルート」を、無人機攻撃しており、またフリゲート艦「Alborz」を紅海に派遣して、米主導の多国籍部隊に対する挑戦と見られる動きをするなど、同地域の緊張を高めています(*1)。

中東での混乱はイランによる代理戦争と呼んでよく、イランは今後も中東の広い地域で、正面からぶつからず、ジワジワと出血させ、疲労・消耗させる「非対称戦」を続け、かつ過激化させていくと予測します。

このように、今後もアメリカは中東から撤退して中国の脅威に専念するどころか、対ロシア、対イランに軍事力を割かざるを得ず、東アジア方面での「力の空白」が最も懸念される事態となってきました。

アメリカが対ロ、対イラン、対中国の三正面作戦を強いられる現況は、習近平氏の認識を楽観視させ、「台湾侵攻の可能性」を限りなく高めてしまっていると考えます。

(*1)Bloomberg(2024.1.2)

台湾への異常なレベルの威嚇

台湾周辺に飛来する中国軍機や艦艇の活動が、近年、極めて活発です。空母を伴った台湾侵攻を想定した軍事演習も頻繁に行わるようになりました。

台湾の邱国防部長は、「最近の敵情は異常だ」と述べて、中国軍のミサイル部隊や台湾対岸の福建省で活動する地上部隊の動向を監視していると明らかにしています。

このような中国軍の動向は、2022年8月のペロシ米下院議長(当時)の訪台の頃から特に活発になっており、それ以降2023年末までに台湾周辺で活動した中国軍機は、延べ7400機以上にも上ります。

台湾の防空識別圏(ADIZ)への侵入は、2021年の960機であったところ、2022年は1738機で、ほぼ倍増しました。2023年は1709機でやや減少しましたが、それは12月の侵入が極端に少なかったためで、台湾総統選をにらんだ中国側の懐柔工作の可能性があります。

なお下図は、台湾国防部が発表している中国軍機の航路を描いたものですが、このような飛行には次のような目的で、パイロットの訓練と共に台湾への威嚇の意味合いがあると考えられます。

  • (1)台湾海峡の台湾正面:台湾本島への航空作戦。
  • (2)南側のバシー海峡:通過する米艦艇などへの対艦ミサイル攻撃や潜水艦探知。
  • (3)台湾東側:大陸本土からレーダーで見えないため、無人機で監視&偵察、また対艦弾道ミサイルの誘導目的もあると推察される。
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このように中国軍はリアルな実戦を想定して軍事訓練を行っていると想定でき、かつ頻繁な飛行侵入は、台湾側に訓練と奇襲の判別を困難にする問題が生じています。これまで台湾は、中国が侵攻する予兆は事前に把握できるとしてきましたが、最近の活発な中国軍の活動を受けて、把握は大変困難になっていると言われます。

かつてない規模の選挙介入

台湾統一を目指す中国にとって、今回の台湾総統選の結果が大きな影響を及ぼすため、選挙への介入がかつてない激しいレベルになりました。