《ニュース》

脳死者からの臓器提供が増える中、移植施設の対応能力の限度を超えたために、臓器の受け入れを断念する例が増え、移植実績の多い3大学病院で、2023年に60件を超えていたことが分かりました。

《詳細》

1日付読売新聞は、施設の受け入れが困難であることを理由に臓器受け入れを断念した件数が、東京大学で少なくとも35件と、前年の4倍に急増していたと伝えました。手術に携わる看護師や臨床工学技士の確保、また、手術後の患者が入る集中治療室(ICU)の不足などが理由といいます。また、京都大学は麻酔科医やICUの不足で約20件を断念、東北大学も医師の不足で7件を断念したといいます。

23年の脳死下での臓器提供は132件と過去最多となり、臓器の摘出手術が複数行われる日数が29日となりました。摘出手術の60%が、人員や手術室を確保しやすい土日祝日に行われているため、受け入れタイミングが集中しやすくなっているとされています。

さらに、移植手術の実績がある施設に患者が集まりやすく、心臓移植は3施設で約7割、肺移植は4施設で7割以上を占めていることが分かりました。移植を待つ患者の団体からは、「提供の意思が生かされなかったケースもある」として、受け入れ態勢の整備を求める声が上がっています。

厚生労働省によれば、臓器提供が可能な施設は2023年3月時点で895カ所あるものの、「脳死下」については約半数の459カ所にとどまります。人材確保が困難であったり、経験や設備が不十分、移植について施設内で合意が得られない、などの理由で体制が整っていない状況です(2023年7月第64回臓器移植委員会参考資料)。

厚生労働省は2024年度から、移植医療の実績が豊富な病院から医師や看護師を派遣し、脳死判定から臓器摘出までの一連の流れを支援することで、移植体制の整備を進めるとしています。

ただ、臓器を提供する人の「魂」の立場に立てば、脳死を「人の死」とみなすことには問題があります。

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