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戸籍上の性別変更のために生殖機能を失わせる手術が規定されている法律について、最高裁大法廷は25日、「違憲であり、無効」とする決定を出しました。

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2004年に施行された「性同一性障害特例法」では、戸籍上の性別を変更するために、「生殖腺がない/永続的に生殖機能を欠く状態であること」「身体の性器が移行した性別と近い外観になっていること(外観要件)」など5要件が定められています。それを満たすためには手術が必要であることから、その合憲性がこのほど、家事審判の特別抗告審で争われました。申立人は戸籍上の性別は男性のトランス女性で、手術なしでの性別変更を求めていました。

今回、最高裁は、「生殖能力をなくす手術」を必要とする特例法の規定は、幸福追求権を定めた憲法13条が保障する「意思に反して身体への侵襲を受けない自由」を制約していると指摘。特例法制定当時は、変更前の性別の生殖機能で子が生まれることによる社会の混乱を防ぐ目的があったとしつつも、こうした問題が生ずるのは「極めてまれなことであると考えられる」としました。

また、医学的知見が進展し、どのような治療が必要かは患者ごとに異なるとして、「治療としての手術を求める規定は医学的に合理性を欠く」と言及しました。その上で、手術を受けるか性別変更を断念するかという「過酷な二者択一」を迫っていると指摘し、制約の程度が重大だとして、手術を求める生殖不能要件の規定が憲法13条に違反すると、全会一致で結論づけました。

今回の判決を受け立法府及び政府は、同要件の規定を条文から削除・変更する改正案を、国会に提出することが求められます。

なお、最高裁は2019年に生殖不能要件を「合憲」としており、その際には、「身体への侵襲を受けない自由を制約する面があることは否定できない」としつつも、「現時点では、憲法13条、14条第1項に違反するものとはいえない」と結論づけていました。ただ、これらの配慮の必要性などは「社会的状況の変化等に応じて変わり得るもの」と補足していました。今回、この判例も変更されることになります。

今回の判定をめぐっては、「少数者の権利を守るための大きな一歩だ」とする一方、「社会的な混乱をもたらす」「家族法制度の根幹を揺るがす」など懸念の声も相次いでいます。

今回の最高裁判定には少なくとも三つの大きな問題があります。その一つが、判決は「社会的な混乱が生じるのは極めてまれ」と極めて安易に結論づけていますが、心理的側面を含めて総合的に検討すると、「社会の現実を無視した判決である」と言わざるを得ないことです。

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