© 2022 Komplizen Film Haut et Court Frakas Productions TOBIS / Erfttal Film und Fernsehproduktion

 

2023年12月号記事

Pick Up Movie

編集部がオススメする「今こそ観たい」映像作品。

「ぼくは君たちを憎まないことにした」

11月10日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

愛する心は、この世界の憎しみよりも強い

【スタッフ】
監督・脚本:キリアン・リートホーフ『陽だまりハウスでマラソンを』
【原作】
「ぼくは君たちを憎まないことにした」
【キャスト】
出演:ピエール・ドゥラドンシャン、カメリア・ジョルダーナ ほか
【配給等】
配給:アルバトロス・フィルム

 

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© 2022 Komplizen Film Haut et Court Frakas Productions TOBIS / Erfttal Film und Fernsehproduktion

 

【レビュー】

2015年に起きたパリ同時多発テロ。著者アントワーヌ・レリスが、テロ発生から2週間の自らの心の変遷を綴った世界的ベストセラー小説を映画化したのが本作である。

2015年11月13日金曜日の夜。パリ中心部の劇場で開催されたライブ・コンサートに、重武装の男3人が侵入する。1500人の観客に銃を乱射し、"ホラー映画以上"の惨劇を引き起こした。少し前には、仏対独の親善試合が行われていたパリ郊外のサッカースタジアムや、周辺のレストランで自爆テロが起きている。いずれも過激派組織「ISIL」によるものだった。

劇場にはアントワーヌの妻エレーヌと彼の友人がいた。安否の確認すらできない混乱と憔悴の中、ニュースは死者120人、そのうち劇場では80人と伝えている。事件後も続く“日常"の中、彼は1歳半になる息子の世話を通して必死に自分を保とうとする。

そして、テロから3日目の朝を迎え、妻の遺体と対面した。涙がこぼれながらも心は意外なほど落ち着き、その日、彼は溢れ出るままにテロリスト宛てに"手紙"を打つが……。

Facebookにアップされたこの"手紙"は、憎しみの連鎖を断ち、"息子が幸せで自由な一生を送る"ための決意として書かれたものだ。そして、神の心を傷つけるテロリストの"無知"に対して放たれた、反撃の言葉でもある。多くの人々の共感を呼び、3日間で20万人以上にシェアされ、仏ル・モンド紙の一面を飾り、各国から反響が寄せられている。

本人自身は、気高い言葉の重みと激しい悲しみに何度も崩れかけている。しかし、息子が世界の良い面を見失う人生を歩まないようにと、テロが"望んでいる"暗い心と戦い、必死に自分を律していく。そこに、愛する心は、究極的に憎しみよりも強いことを示そうとするメッセージが見えてくる。

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ザ・リバティWeb シネマレビュー

「ぼくは君たちを憎まないことにした」

(星3.5。満点は5つ)