《本記事のポイント》

  • 輸入減に表れた中国のデフレ
  • 外資の脱出が止まらない
  • 不動産バブルの崩壊から金融バブルの崩壊へ

「中国経済は、チクタクと音を立てる時限爆弾のようだ」

バイデン米大統領は8月10日、このように語った。同時に、中国経済の実質経済成長率は、5%ではなく2%であるとも公言し、ホワイトハウスは一般に公表されている経済成長率を信じていないことを告白してしまった。

だが実質経済成長率が2%もあるかどうかさえ、極めて怪しい。

輸入減に表れた中国のデフレ

まず同国経済のデフレが確定した。7月の前年同月比で消費者物価は0.3%下落と報じられた。もとより生産者物価は10カ月連続で下落。アメリカをはじめとして世界はこの18カ月インフレで喘いでいるが、その逆を行っているのだ。

中国国家統計局は、「7月にデフレは将来においてもない」と宣言し、これを否定する。しかし中国における消費者の財布の紐が締まっていることは、輸入の減少にも表れている。中国税関総署が7日発表した8月の貿易統計によると、輸入は7.3%減少した。

外資の脱中国が止まらない

輸出も同時に減少し、稼ぐ力も失われてきている。同貿易統計によるとその額は前年比8.8%減少した。

背景には、中国企業の生産拠点のオフショア化や外資の脱中国化が進んでいることがある。中国国家外貨管理局(SAFE)が8月に発表した第2四半期の外資の対中直接投資は49億ドルに減少し、1988年以降で最小となった。

対外開放姿勢への疑念も、外資の中国への投資減少を招いている。「改正反スパイ法」は「いつ自社の社員が標的になるか分からない」といった不安を呼び、外国人が銀行口座から自分の預金を引き出せないといったケースが数多く報告されるなど、不確定性が増している。

ヘイマン・キャピタル・マネジメントの創業者であるカイル・バス氏も、本誌2022年12月号 (「東洋の監獄」と化した香港を見捨てるな) の編集部の取材に答え、「(中国から脱出しなければ)多くの米企業は、中国で全てを失うことになると思います」とコメント。

同氏の友人で、中国で100億ドル(約1兆4700億円)以上の事業を展開するあるCEOがオフレコで、「静かに中国から去るために、我々は出来る限りのことをしている」と明かすなど、水面下で多くの企業が静かに撤退している実情を語った。

それらの企業は、メキシコやカナダ等に移転している。アメリカの「ニアショアリング(近隣国での生産)」「フレンドショアリング」戦略がじわじわと効果を発揮しつつあるとも言える。これが中国の輸出の減少になって表れているのだ。この現象が加速すれば、「世界の工場・中国」の終焉ともなり得るだろう。