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米ウォール・ストリート・ジャーナル紙はこのほど、アメリカが中国人留学生に制限をかける一方、同盟国である日本が歓迎している状況を取り上げ、安全保障上のリスクを指摘しました。

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ウォール・ストリート・ジャーナル紙は22日、「日本、アメリカで禁じられた中国人留学生を受け入れ(Japan Accepts Chinese Students Banned in U.S.)」と題し、次のように日米間の「ズレ」を報じています(日本語電子版は25日付)。

「アメリカは中国の軍事技術開発を担う大学からの留学生を締め出している。一方、同盟国である日本はこうした留学生を受け入れている。両国の対応の違いが、大学でのスパイ行為に道を開きかねないと危惧する見方が一部にある。日本は中国人留学生を歓迎する姿勢をあらわにし、政府当局者や大学関係者は、米政府の制限強化を受け、代わりの留学先を探す学生を喜んで受け入れると話す。自由な知的交流や科学的交流の重要性をその理由に挙げている」

同紙はドナルド・トランプ前大統領の大統領令により2020年、中国人留学生や研究者などへの入国制限が科せられ、バイデン政権下でもこの大統領令が実施されていることに言及。その上で、アメリカで制限されている中国の「国防7校」からの留学生も、日本では制限されていない現状を指摘しました。

「国防7校」とは、中国国務院・国防科技工業局の監督下にある大学です。中国人民解放軍と関係が深く、軍事関連技術の研究・開発を行っています。この問題については政府が6月2日に閣議決定した答弁書により、2021年3月までの1年間で、「国防7校」のうち6校から計39人が日本の大学に留学していたことが判明しており、この度のウォール・ストリート・ジャーナル紙も言及しています(*)。

(*)答弁書によれば、徳島大、東北大、千葉大、高知大、新潟大、名古屋大、会津大、東京工業大、京都情報大学院大、福岡工業大の計10大学が留学生を受け入れていたとのこと。経産省は「国防7校からの留学生という理由だけで、規制するのは難しい。受け入れる大学側が、研究内容などを慎重に精査する必要がある」と説明(6月2日付読売オンライン)。

6月には国立研究開発法人「産業技術総合研究所」の中国人研究員が警視庁公安部に逮捕され、さらに容疑者が「国防7校」の教授を務めていたことも判明して注目を集めましたが、ウォール・ストリート・ジャーナル紙はこの事件にも触れた上で、ハーバード大学ケネディスクール(行政大学院)のカルダー・ウォルトン氏による以下のコメントを引用し、日米間のズレを指摘しています。

「(アメリカにとって)日本は極めて貴重かつ密接な機密情報パートナーであり、日本の国家安全保障に影響する可能性のあることは全て、アメリカにも極めて重要なことになる」

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