2023年9月号記事

AIを神格化する人類

AI皇帝をこの世の支配者にしてよいのか

AI(人工知能)の判断は、公平で正義をもたらすものなのか。
人類はご神託のように、AIの判断を崇めるべきなのか。
AI時代にどう備えるべきかを探った。

生成AIが世に解き放たれた。文章や画像が自動的に作成できるため、重宝され始めた。医療や法律・会計の分野でも活用が見込まれ、AIへの期待値が高まっている。だが人々の熱狂に反して、生成AIにはさまざまな問題がある。その一つが、回答に至る過程を説明できない「ブラック・ボックス問題」だ。

「なぜそのような結論に至るのか、人間の心だって説明できないでしょう?」

米アルファベット(旧グーグル)社の最高経営責任者のサンダー・ピチャイ氏は、このように述べ、自社の生成AI・Bardについて、こう言い訳した(*1)。

技術的には確かにそうかもしれない。ただ多くの人がこうした説明に「責任逃れ」を感じるのではないか。

実際、AIが間違いを犯さないように「教育係」を担当しているのは、グーグルや米マイクロソフト社などの巨大IT企業だ。

マイクロソフトは自社が開発したAIボットのTayに自然言語を学習させようと、ツイッター上に公開したことがある。出だしは好調だったが、他のツイートのユーザーと会話するうちに、たった16時間で「ナチスは正しかった。ユダヤ人は大嫌い」などとツイートし、"人種差別主義者"に変貌してしまった。

(*1)米番組「60ミニッツ」のインタビューでの発言。

 

次ページからのポイント(有料記事)

生成AIは偏見から自由にはなれない

INTERVIEW 1 AIが勝手に戦争をする時代がやってくる!? / 河田 成治氏

INTERVIEW 2 AIはなぜ人間を超えられないのか / 仙波 洋史氏

AIを神にしてはならない