2023年9月号記事

Interview

デジタル通貨の導入で
ソ連時代のような中央集権化が進む

中央銀行デジタル通貨(CBDC)のプロジェクトに関わる国は、世界で130カ国に上る。しかしその導入によって、各人の取引が監視され、自由が奪われる可能性がある──。

リチャード・ヴェルナー

英ウィンチェスター大学教授

リチャード・ヴェルナー

(Richard A. Werner) 1967年、ドイツ生まれ。英オックスフォード大学大学院で経済学の博士号を取得。東京大学大学院にも留学。オックスフォード大学リナカ・カレッジのメンバーであり、銀行・金融の大学教授。また、イギリスに非営利コミュニティバンクを設立するコミュニティ利益会社「ローカル・ファースト」の創立者でもある。91年~93年オックスフォード大学経済統計研究所の研究員として、日本銀行金融研究所および大蔵省財政金融研究所で研究。95年に日本における「量的緩和」の概念を提唱。著書『円の支配者』(草思社)は日本でベストセラーとなった。ツイッターは、@scientificecon

世界の大国が中央銀行の発行するデジタル通貨(CBDC)の検討や実証実験を本格化させている。中国は実用化に向けて、世界に先んじている。欧州中央銀行は10月にもデジタルユーロを正式に承認する見通しだ。米バイデン政権は昨年3月、デジタルドル発行に伴うメリットとリスクを検討するよう、関係当局に指示。日本も、日本銀行によるデジタル円の実証試験が最終段階に入っている。

CBDCをめぐり、「紙幣の管理費用が抑えられる」「違法取引のリスクが減る」などのメリットは指摘されるものの、「当局が取引を監視、管理しやすくなれば、人々の自由が奪われる」という危険性については、議論が十分に深まっていない。

CBDCの導入は、国家による全体主義的な支配につながる可能性がある。10年近い前から警鐘を鳴らし続ける、経済の専門家に話を聞いた。

次ページからのポイント

"自分のお金"なのに使えなくなる!?

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CBDC導入で現金は廃止へ