《ニュース》

米政府が「言論統制」を行っているという指摘について、新たな動きが報じられています。

政府による言論弾圧をめぐり下院議会の公聴会で証言を行ったジャーナリストに対し、バイデン政権が不当な圧力を加えたのではないかと指摘されています。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙も社説で取り上げ、警鐘を鳴らしました(3月28日付)。

《詳細》

共和党多数になった下院では今年1月、捜査権の濫用など、共和党陣営が「連邦政府の武器化(the Weaponization of the Federal Government)」と表現する行為を調査するため、司法委員会内に新たな特別小委員会が結成されました。

司法委員会委員長を務めるジム・ジョーダン氏(共和党)が、兼任する形で特別小委員会を率い、複数回にわたって公聴会を開催。3月には、「ツイッター・ファイル」を調査してきたジャーナリストのマット・タイービ氏が証言しました。

本誌・本欄でも報じてきたツイッター・ファイルとは、イーロン・マスク氏によって明らかにされ、複数の外部ジャーナリストが調査・発表しているツイッター社の内部文書のことです。これにより、米政府とツイッター社が密に連絡を取り合う形で、リベラル民主党陣営の主張に沿わない言論が排除されてきたことが判明しています。

言論統制の詳しい実態としては、ツイッター社が連邦捜査局(FBI)から指示を受けて検閲を行っていたことを示すメールが、内部文書として大量に発見されていることに加え、国務省や国防総省、中央情報局(CIA)、州政府、地方警察が、FBIを窓口にしてツイッターと連携していたことも明らかになっています。

タイービ氏は3月9日に開かれた公聴会で、ツイッター社をはじめとする巨大IT企業が、政府の要求に基づく検閲システムを開発してきたことを証言しました。

このほど新たに明らかになったのが、タイービ氏が公聴会で証言をした同日、日本の国税庁にあたる内国歳入庁(IRS)の捜査官が、事前の予告もなく同氏の自宅を訪れていたということです。タイービ氏が前述の委員会に伝え、各メディアが報じています。

報道によれば、捜査官はIRSに電話するよう指示を残し、タイービ氏が同庁に電話すると、「成り済まし犯罪の懸念」から、タイービ氏による2018年と21年の確定申告が却下されたと告げられたとのことです。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙は3月28日、「IRSはマット・タイービに奇妙な自宅訪問を行う」と題した社説で、次のように指摘しました。

「タイービ氏は、2018年の申告が電子的に受理されたことを示す文書を委員会に提出しており、4年半以上前にその申告を行った後、IRSが自身や会計士に問題を通知することはなかったと述べている」

「より大きな問題は、いつからIRSはエージェントを抜き打ちの自宅訪問に派遣するようになったのかということだ。通常、IRSは確定申告の一部に異議を唱える場合、督促状を送る。もしくは、納税者本人か申告代理人に詳しい情報を求めるだろう。もしIRSが監査を求める場合、代理人の事務所で面談を行う。予告なしに立ち寄ることはない」

同紙はIRSによる予告なき訪問の「奇妙なタイミング」を踏まえ、「脅迫の可能性」を指摘した上で、「多くのアメリカ人が恐れているのは、(バイデン政権下で)議会から新たに800億ドル(約10兆円超)の予算を得たIRSが、政敵に対して恐るべき力を発揮することだ」とし、タイービ氏には訪問の理由を「知る権利」があると論じています。

ジョーダン議員はイエレン財務長官とIRS長官に書簡を送り、なぜ予告のない訪問を行ったのか説明を要求しています(IRSは財務省の外局として設置されている)。

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