《本記事のポイント》

  • 働かなくても10万ドルがもらえる!
  • アメリカ版「子ども手当」がもたらす副作用
  • 子供の上昇志向をも奪う政策

アメリカのバイデン民主党政権は、「働かない国民」を増産しているようだ。最近発表された2つの研究結果が、この方向性を示唆している。

1つは、サプライサイドのエコノミストのスティーブ・ムーア氏、ケーシー・ムリガン氏、E. J. アントニ氏がニューヨーク・ポスト紙に寄稿した調査結果である。

働かなくても10万ドル超がもらえる3州とは?

彼らの研究によると、ワシントン、マサチューセッツ、ニュージャージーの3州で10万ドル超、13州で8万ドル超の給付金が政府から支給される。そしてほとんどの州で、6万9000ドル(約916万円)の手当てがもらえるようになっているという。以下がその詳細である。

  • 24州で、誰も働いていない4人家族の失業手当とオバマケアの補助金は、少なくとも国の所得中央値に匹敵する。

  • 年間25万ドル(約3300万円)近く稼ぐ家庭でも、すべての州でオバマケアの補助金を受ける資格がある。

  • 12の州で、失業手当とオバマケア補助金とを合算した給付金は、平均的な教師、建設労働者、電気技師、消防士、トラック運転手、機械工、小売店員の給与を上回っている。

  • ニュージャージー州では、誰も働かない4人家族の場合、年換算で10万8000ドル(約1400万円)に相当する給付金を受け取ることができる。

  • コネチカット州とニュージャージー州では、年収30万ドル(約4000万円)の家族がオバマケアの補助金を受け取ることができる。

  • ニュージャージー州は、両親ともに失業手当と医療費補助のオバマケアを受けている場合、一家で年間10万ドル(約1328万円)相当を受給できる。コネチカット州の場合、給付金は8万ドル(約1062万円)に達することもある。

  • 失業手当はほとんどの州で最大6カ月しかもらうことができないが、一旦仕事に戻った後に、また失業手当をあてに仕事を辞める誘因を生んでいる。

  • 全米の州の失業手当とオバマケア補助金の年換算額の中央値でさえ、6万9000ドル(約916万円)であり、消防士、トラック運転手、機械工、小売店従業員の中央値の収入よりも多いのだ。

  • 特に問題なのは、低所得者層のセーフティネットとして導入されたこれらの制度が、州によっては年収50万ドル(約6640万円)の世帯を含む高所得者層にまでに拡大されていることだ。要するに、富裕な民主党支持者層へのバラマキであり、低所得者層に恩恵をもたらすものではない。

アメリカ版「子ども手当」がもたらす副作用

もう一つの研究結果は、ニューヨーク・タイムズ紙上に発表されたスコット・ウィンシップ氏(アメリカン・エンタープライズ・インスティトゥートのシニア・ディレクター)の子女税額控除に関する分析である。

子女税額控除とは、1998年に子供を有する家庭の負担を軽減するために設計された税額控除である。

バイデン政権下の21年3月に成立した「米国救済計画法(American Rescue Plan Act of 2021)」で、18歳未満の子女への控除額が、それまでの2000ドル(約26万5千円)から3000ドル(約39万8000円)に引き上げられた。

これについてウィンシップ氏は、「子女税額控除」が、実際は貧困の解決にならないとして、詳しく論じている。以下、主要な論点を紹介する。

  • 2021年3月に「米国救済計画法」で子女税額控除が拡大されて以来、議員や研究者はこの政策の是非を論じてきた。

  • 控除額の増額の賛成派は当時、子女税額控除は親の就業を阻害せずに貧困を減らすと主張。私を含む反対派は、手当が一部の親に働くことをやめさせる。そして短期的な効果は長期的なマイナスの効果によって逆転されると述べてきた。

  • 2年経過して結果はどうなったのか。確かに21年の子供の貧困率は、9.7%から5.2%と過去最低を記録した。

  • しかし中長期的に見た場合の結果は異なる。シカゴ大学の経済学者ケビン・コリンズ氏とブルース・マイナー氏のシングルマザーに焦点を当てた調査結果では、子ども手当が恒久化されると、130万人が働くことを辞めると発表した。

  • ある親は労働時間を減らし、また別の親は離婚するか、結婚しないことを選ぶ。婚外子も増える。個別のケースでは正当化されることもあるだろうが、一般的には貧困を拡大させることにつながる。

  • さらに悪いニュースがある。過去数十年にわたる子供の貧困の減少は、所得階層の上昇を伴うものではなかった。政策は子供の貧困を減らすとしても、子供の上昇志向を損なう可能性があるのだ。

  • 新議会発足後、共和党は貧困層の所得階層を上昇させる政策に取り組むべきであり、民主党はこの政策が、善意を台無しにしてしまうリスクを受け止めるべきだ。

子供の上昇志向をも奪う政策

ほどんどの州では、失業給付とオバマケアの補助金で6万9000ドル(約916万円)の手当てが貰える。一般的なブルー・ワーカーの所得よりも高い金額である。

恒久的なものではないとはいえ、これが働くことに対して「目に見えない税金」になっているのは明らかである。仕事を得るとボーナスを失うことになるからだ。働くという善いことに、税金をかけていることになる。

結果、労働参加率は年々減り続け、低所得者層で36%という低い数値に留まっている。

懸念すべきは、働くことに熱心ではない家庭に育った子供たちが、下位の所得層から抜け出す可能性が低いというウィンシップ氏の指摘だろう。

高校を卒業し、フルタイムの職業に就き、そして結婚して子供を持つことを21歳まで先延ばしにすれば、98%が貧困から抜け出せるという研究もある。

だが手厚い補助によって、人々は働くインセンティブを失っている。それが、かえって人々を貧困に永続的に留めてしまう。

しかも1000万人以上の人々が労働市場から離脱したことで、世界的なインフレをも招いている。

このような状況の中で、米議会では1.7兆ドル(約225兆円)規模の歳出法案が可決した。4100ページもある歳出法案で、議員の数名を除いて、中身を確認した議員はほとんどいない。このため予算法案に対する批判の声が上がっているが、残念なのは一部の共和党議員が賛成票を投じたことである。

働かない人々を増やす、行き過ぎたバラマキをどう削減し、歳出を抑制するのか、来年以降、本格的な議論が求められることになる。

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