2022年8月号記事

Interview

米保守言論人が語る

西側はロシアに門戸を開き中露合体を防げ

米保守界をけん引してきた言論人に、国際情勢の現状を聞いた。

(取材協力:西幡哲)

ジョシュ・ハマー

ジョシュ・ハマー
(Josh Hammer)
ニューズウィーク誌のオピニオン・エディター。ポッドキャスト「ジョシュ・ハマー・ショー」のホストであり、ヨラム・ハゾニー氏が立ち上げたエドマンド・バーク財団では特別研究員を務める。テキサス州弁護士会メンバー。

──バイデン米政権はトランプ前政権による中国への関税措置(*1)の引き下げを検討しています。

ハマー氏(以下、ハ): 国家安全保障をめぐる姿勢、経済政策、中国共産党との関わり方など、どこを見てもバイデン政権は「中国に大変甘い」と言えます。

残念ながら過去40年以上にわたり、アメリカの経済政策は国民の中国依存を加速させてきました。しかし、トランプ政権による対中関税は、自由貿易をめぐって40年以上続いた超党派の合意を打ち破った領域の一つです。実際には、自国通貨を際限なく操作し、他国の知的財産などを窃取する中国との間に「自由貿易」というものは存在しません。

(*1)トランプ政権は中国の知的財産権侵害などに対する制裁として、米通商法301条に基づき複数回に渡って対中関税の発動・引き上げを行った。

ウクライナも偽情報を発信

──「ロシア同様、ウクライナも偽情報やプロパガンダを流している」と指摘されました(*2)。

ハ: 両陣営が偽情報とプロパガンダを大量に発信しています。ロシアのものは悪名高いですが、ウクライナも非常に洗練された情報戦を展開しています。ツイッター社に(政府および国家当局関係メディアのアカウントであることを示す)認証を受けている「@Ukraine」というアカウントがありますが、紛争開始当初、少なくとも私には疑わしく思える内容の発信をしていました。

同アカウントはウクライナ国内で運営されておらず、西洋諸国のどこか、推定するにアメリカで運営されている可能性が非常に高い。おそらく何らかのNGOやリベラルの国際主義者が運営していると思われます。

2014年の(マイダン)革命時、ウクライナの腐敗度指数は175カ国中142位とひどいものでした(*3)。今でも非常に腐敗した、オリガルヒ(新興財閥)が支配する国家であり、こうした悪辣な民間部門が制限を受けず独占的に政府の契約を受けています。

(*2)3月4日付ニューズウィーク誌「Clarity on Russia, Ukraine and the American National Interest」
(*3)トランスペアレンシー・インターナショナル調べ。