主義・主張が色濃く反映される元旦の大手6紙の「社説」を読み比べ、各紙がどのような問題意識を持っているか、見ていきましょう。

アメリカを超えた覇権国にならんとしている「中国」に対する物の言い方を軸に分析すると、新しい視点が得られるかもしれません。


保守系3紙のミカタ:国際社会に影響を及ぼす「力」が必要

読売「平和で活力ある社会築きたい 英知と勇気で苦難乗り越える」

  • 経済のグローバル化は世界経済の発展を促したが、その恩恵を活用して力をつけた中国は、軍事力の拡大を加速させている。
  • 日本は、まずバイデン米新政権との間で日米同盟の強化を急ぐとともに、国際社会の課題解決の努力やルール作りに積極的に参加して、発言権を確保すべきだ。そのためにも、大事なのは国力である。基盤をなすのは経済力だ。
  • 激動する世界にあって、国家の平和と安全を確保していくには、日本の立場について国際社会の理解を勝ち取るための、対外発信力が不可欠だ。

日経「2021年を再起動の年にしよう」

  • 必要な再起動の1つ目は、「経済」。経済の再生には、単にコロナ前に戻すだけではなく、デジタル化や雇用市場の改革など新たな経済・社会を切り開く戦略がいる。
  • 2番目は「民主主義」。中国は香港で、民主活動家の弾圧など強権ぶりを強めている。日米欧など民主主義国が、格差など社会問題や国民の不満を民主主義的な手法で解決し、自由で開かれた民間主導の資本主義を磨き直すことが急務である。
  • 第3は「国際協調」。バイデン次期米大統領は、協調路線に回帰する意向を示している。その試金石となるのが、コロナ対策と地球温暖化対策だ。今後も米欧など価値観を共有する国々とともに国際協調の立て直しに積極的に関わるべきだ。

産経「中国共産党をもう助けるな」(※論説委員長の「年のはじめに」より)

  • 天安門事件で、中国共産党は軍を出動させ、自由を求める市民や学生に容赦なく銃弾を撃ち込み、鎮圧した。事件当日に日本の外務省は、西側諸国が共同して制裁措置をとることに反対する文書を作成。「中国を孤立化させてはいけない」と瀕死の共産党を救った。
  • 日本は戦時中も救った。訪中した日本の要人が"侵略"について謝ると、毛沢東はいつもこう答えた。「申し訳ないことはない。日本軍国主義は中国に大きな利益をもたらした。(蒋介石率いる国民党軍を弱らせた)皇軍がいなければ、われわれは政権を奪えなかった」。
  • 武漢で最初のコロナ感染爆発が起きた際、情報隠蔽が世界的大流行の引き金を引いた。いま中国は西側諸国の「反中同盟」を切り崩そうと日本を懐柔しようとしている。手始めが、習近平国家主席の国賓来日実現。日本は瀕死の中国共産党を2度助けた。3度目は、絶対にあってはならない。

読売・日経は、「中国の脅威を認識しています」と読者に示してはいるものの、結論的には「国際社会の理解」「対外発信力の強化」「国際協調」という着地です。もちろんこれらは大事ですが、国際社会に影響力を及ぼすためには、背景に強い経済力・軍事力が必要です。

今年は、日本国内で宙に浮き続けている憲法改正を含め、「軍事」について真剣に議論せざるを得ない局面に立たされるかもしれません。日本人自身が目覚め、強くならなければいけないでしょう。

産経は、これまでの日本政治(自民党政治)の対中外交の誤りを指摘しています。これは、今後、菅政権が進めるであろう「日中経済協力の強化」に対する警鐘とも受け取れます。


左翼系3紙のミカタ:核廃絶の文脈で「中国」をスルー

朝日「核・気候・コロナ 文明への問いの波頭に立つ」

  • 核の恐怖を伝える「終末時計」は昨年、人類滅亡まで「残り100秒」を指し、史上最悪を記録した。過去の政府提言の一節、「われわれの文明の性格そのものが問われているのではないか」が思い出される。
  • 興味深いことに、コロナ禍で傷んだ経済の再生を、脱炭素や生態系の保全といった気候変動への取り組みと連動させようという機運が生じている。「グリーンリカバリー(緑の復興)」である。
  • 米ロはじめ核保有国と、「核の傘」の下にある日本などは、この条約(今月22日に発効する核兵器禁止条約)に背を向ける。「恐怖の均衡」による核抑止論から抜け出せていない。世界はなお、偶発的な核惨事が発生する危険と隣り合わせである。

毎日「コロナ下の民主政治 再生の可能性にかける時」

  • 民主政治がコロナへの対応能力に欠けているのではないかという疑念が膨らんでいる。中国は都市封鎖やITを駆使した国民監視などの対策を、持ち前の強権政治により一気に進めた。感染拡大を早々に抑え込んでみせた。
  • 米大統領選は1億5000万人を超える人が票を投じ、投票率が過去最高になった。それは選挙の結果以上に将来の可能性を示したと言えるのではないか。カマラ・ハリス次期副大統領ら多様性に富んだ政治家群像を登場させたことも期待値を上げる。
  • 今年は衆院選が10月までにある。政治がどこまで傷んでいるのかを把握し、復元への道筋を示す機会となる。民主政治は間違える。けれども、自分たちで修正できるのも民主政治のメリットだ。

東京「コロナ港から船が出る」

  • (今月22日の)国連の核兵器禁止条約の発効の今こそ、対立の虚しさに目を覚まし、核廃絶へ協調する好機では──。
  • 人間性の結集こそが、核や疫病などの脅威に協調して立ち向かう力になるということでしょう。分断、対立を乗り越えて。協調の未来へ。
  • 米バイデン新政権はオバマ政権が目指した「核なき世界」路線に回帰の構えです。コロナ禍を機に、世界が「人間性」の方へ舵を切る流れに、この国だけが取り残されるのでしょうか。政治の針路を未来志向へと変えねばなりません。

朝日・東京は、今月22日に発効する、核兵器を違法とする「核兵器禁止条約」に触れています。ところが両紙の社説には、なぜか「中国」という文字が一度も出てきません。核廃絶の文脈で中国の核の脅威に触れないのであれば、それは言論機関としてほぼ何も言っていないことに等しいでしょう。

ちなみに、核保有国はこの条約に参加していないため、実効性に課題が残っています。

毎日は、日本の民主政治が傷んでいることを問題提起しています。でも、民主主義を正常に機能させるためには、マスコミもまた正常に機能しなければいけない、という点を押さえておきたいと思います。


NHK「ゆく年くる年」も中国寄り!?

さて、大みそか恒例のNHK「ゆく年くる年」の中継は、東京・深大寺の除夜の鐘で始まりました。ところがその次に画面に映し出されたのは、横浜中華街の、中国の獅子舞の様子でした。

年越しの、最も文化的・宗教的な面が反映される「ゆく年くる年」の冒頭で、神社やその他の仏閣を差し置いて、こうした中継地を紹介することには首をかしげたくなります。

昨年12月、大川隆法・幸福の科学総裁は「エル・カンターレ祭」で、中国が他国を攻撃する生物兵器としてコロナウィルスを開発したという議論について、「ウィルス戦争が、第三次世界大戦として起きたかもしれない」と言及。「数の広がり方から見るかぎりは、欧米には別途ウィルスが撒かれたものだと推定しています」とし、「大統領が誰になろうとも、今後とも、まだ研究・追及はしなければいけない」と指摘しました。

2021年は、覇権国アメリカの混乱や、創立100周年を迎える中国共産党の動向など、政治や経済、外交など多くの点で見通しが立ちにくい年となりそうです。ただそんな中でも、私たちは、常に「何が正しいか」を見抜く目を持つ必要があります。

(山下格史)


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【関連記事】

2020年12月9日付本欄 ウィルス戦争は「第三次世界大戦」として起きたか ~エル・カンターレ祭大講演会「"With Savior"-救世主と共に-」~

https://the-liberty.com/article/17871/