ロシアのプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領が、ロシアのサンクトペテルブルクで会談を行った。両国の会談は、昨年11月に起きた、トルコによるロシア軍機撃墜事件の後、初めてとなる。

会談では、事件以降冷え込んでいた両国の関係を修復することで合意した。

両国の関係がこじれ、紛争につながらなかったことは望ましい。だが現在、両国は欧米からの孤立を強めつつある。両者が手を結び、さらに欧米諸国から距離をとる方向に向かうことは新たな火種となりかねない。

両国が関係修復を狙ったのは経済的な問題が大きい。ロシアはウクライナ問題で欧米諸国からの経済制裁に苦しんでいる。一方、トルコもロシア軍機撃墜事件に端を発するロシアからの経済制裁で打撃を受けた。

先月トルコで起きたクーデター未遂事件で、エルドアン大統領と欧米諸国の関係が悪化したことにより、「反欧米」という点で立場が一致した。

中国との関係を深めるロシアとトルコ

問題なのは、「反欧米」が「親中国」につながりかねない点である。欧米との関係が悪化すれば、両国は経済的な事情から中国との関係を強化せざるを得なくなるからだ。

すでにロシアとトルコは、中国主導のAIIB(アジアインフラ投資銀行)に参加している。特にロシアはAIIBへの出資金額が3位ということもあり、経済的にも中国との関係強化が懸念される。

さらに、中露両国と中央アジアを中心とする計8カ国からなる国家連合、「上海協力機構」は、経済面のみならず、安全保障上の協力体制でもある。

経済的問題を理由にロシアとトルコが中国との関係を強化すれば、覇権主義を強める中国を利することになる。

中露を合わせた軍事力は、欧米諸国にも対抗できるレベルであり、そうなれば世界大戦の危機が訪れるかもしれない。

欧米諸国は本当に警戒すべき国を見誤ってはならない。

日本はリーダー国として主体的に判断せよ

こうした状況を打開できるのは日本だ。ロシアは日本に対して悪い感情は抱いておらず、むしろ、シベリアの開発などで日本と経済的な協力関係を築きたいと望んでいる。また、トルコも親日的な国だ。両国と欧米諸国との関係改善に日本が一役買うことで、逆に中国包囲網に組み込むことも可能となる。

日本は、欧米諸国の顔色を伺うのではなく、ロシアやトルコを自由主義陣営に引き入れることの重要性を粘り強く説得していくべきだろう。 (片)

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