オランダ・ハーグの仲裁裁判所は、国連海洋法条約に基づき、「南シナ海で海洋進出する中国が主張する管轄権に国際法上の根拠はない」との判決を12日、下した。

中国は1950年前後に独自の境界線である「九段線」を示し、南シナ海のほぼ全域での主権と管轄権を主張してきたが、それに国際法上の根拠はまったくなかった。仲裁裁判所はこの「九段線」も触れ、中国の主張を根底から否定する国際司法判断を、今回初めて示した形だ。

判決では、中国がつくる人工島は「岩」であると認定し、漁業や資源開発などの権利を持つ排他的経済水域(EEZ)は設けられないという判断も示された。また、中国がこの地域でフィリピン漁船にたびたび妨害を加えていたことも「国際法違反」だとしている。

「国際法など知ったことか」といわんばかりの中国

もちろん中国がこの結論を素直に受け入れるはずもない。

中国の習近平国家主席は、「南シナ海の島々は昔から中国の領土であり、領土、主権、海洋権益はいかなる状況でも仲裁判決の影響を受けない。判決に基づくいかなる主張や行動も受け入れない」と、お決まりのセリフを繰り返す。

中国の王毅外相はこの裁判について、フィリピンに対し、「(中国との)対話を拒み、当事国の同意を得ずに一方的に強制的な仲裁手段を推し進めたことは法治の精神に違反する」と非難している。中国がまともに対話することを拒否しているから、国際裁判にまで発展したにもかかわらず、だ。

中国に法を守らせる包囲網を

習近平氏が国家主席に就任する前、大川隆法・幸福の科学総裁は習氏の守護霊を呼び出して、その野望を聞いていた。習氏の守護霊は、「中国を経済・軍事など全ての面で世界一にし、『元朝のような世界帝国』を築く」と豪語し、その過去世はモンゴル帝国の創始者チンギス・ハンであると語った。

今後予想されるのは、これまでどおり南シナ海での影響力を増すことと、孤立を避けるために周辺諸国に経済的な圧力を加えることだ。すでに、モンゴルやベトナムなどでは、「反中」と言われた指導者が、今年に入って次々と退陣し、親中派がトップに就任するという不気味な動きがある。

軍事的脅威を見せつける「ハード外交」と、外交や経済関係による「ソフト外交」の両方を駆使する中国を侮るべきではない。

今回の判決は、罰則や強制する仕組みがなく、中国にとっては紙切れ同然だ。仲裁裁判所の決まりに従うとは考えづらい。ならば、中国の南シナ海支配で迷惑している関係各国が声をそろえ、裁定受け入れを迫っていくしかない。

その際、対話が通じない中国に対して通じる"言語"が「経済」と「軍事」であるという事実を踏まえて、日本は、先進7カ国(G7)や東南アジア諸国と経済・軍事両面で結束を強めていかなければならない。中国が「法を守ったほうが自国の利益になる」と思わざるをえないような、強力な包囲網をつくる必要がある。

(小林真由美)

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