米ハフィントン・ポスト紙がこのほど、ルーマニアがユーロ圏への加入に足踏みしていることを報じている。

現在、欧州連合(EU)加盟国は28カ国。その内、19カ国が共通通貨ユーロを導入している。

あまり知られていないが、イギリスとデンマーク以外のEU加盟国は、一定の条件を満たしたら、ユーロ圏に加入することが義務付けられている。ルーマニアもそのうちの一つだ。その条件とは、安定したインフレ率や貿易赤字の削減などだ。

ルーマニアが学んだギリシャの教訓

ルーマニアの指導者の多くは、今のところユーロ圏加入に前向きだ。実際、同国は2019年にユーロ圏に加入することを目指している。

しかし、ルーマニア国立政治行政大学院のアリーナ・バルガオニュー教授によると、ギリシャ危機を目の当たりにしたルーマニア政府首脳の一部は、経済がより成熟するまでユーロ圏に加入すべきではないと主張している。実際、ギリシャ危機を見たルーマニア中央銀行のムグール・イサレスキュー氏は、10年ほど加入を先送りする可能性を示唆した。

その根底には、ユーロ圏のような経済共同体の中では、競争力が高い国にとって有利で、低い国にとっては不利という事実がある。EUの中で経済規模が下から二番目のルーマニアにとっては、懸念すべきことだ。

ルーマニア国民は米ソ冷戦時代、共産主義の下で「緊縮財政」を経験している。当時の独裁者ニコラエ・チャウシェスクの下、ルーマニアは借金を返すために、国の生産物を無理矢理輸出に回した。結果、国内で食料などの物資不足が起きたのだ。

そのため、ギリシャや他の南欧諸国が「緊縮財政」の下で苦しんでいるのを見たルーマニア国民の間では、ユーロ圏加入に対する懸念が広がっている。

EUの夢の終わり

ヨーロッパの国々は、20世紀の戦争の歴史から自由になり、経済発展を遂げるために、「経済的な統合」という夢を追い続けてきた。「一つの大きな経済圏となり、全員が裕福になれば戦争もなくなる」と考えたのだ。

しかしその代償として、ユーロ圏の国々は「国家意識」や「主権」といったものを否定してきた。それは、「自分のお金を刷る」という、主権国家が本来持つべき権利を放棄し、ギリシャのような小国が、ドイツのような大国の言いなりになるということでもある。いま、「自由」は「隷属」となり、「夢」は「悪夢」となりつつある。

ルーマニアを始め、ヨーロッパ諸国の人々は、EUの夢が終りつつあることに少しずつだが気付きはじめている。 未来は「国家の否定」ではなく「国家の自立」にあることを、ヨーロッパ諸国の指導層が理解する日が来ることを願いたい。(中)

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