赤字が続く国民健康保険(国保)の財政基盤を強化するため、医療保険制度改革法がこのほど参院本会議で成立した。各紙が報じた。

高齢者や非正規社員の加入が増えている国保は、加入者の年齢が高く医療費がかかる一方、平均収入が比較的低くて十分な保険料が集まらないため、赤字構造を抱えている。

今回の改革法の柱は、国保を維持するため、運営を市町村から都道府県に移すことで、財政基盤を強化することだ。加えて、国保への公費投入額を年3400億円に拡大することも決定した。この財源を捻出するため、大企業の社員が加入する健保組合と公務員が加入する共済組合の負担増が盛り込まれている。

患者の自己負担についても、入院時の食事代を段階的に値上げし、紹介状なしで大病院を受診した場合、5000~1万円程度の自己負担を求める。また、保険診療と保険のきかない診療を併用する「混合診療」を、16年度から患者の申し出によって迅速に受けられるようにする拡充策も盛り込んだ。

病院を受診する患者の自己負担を高めることは、軽症患者の安易な大病院での受診に歯止めをかける効果がある。また、今までは禁止されていた「混合診療」を、患者の申し出に基づいて受けられるよう拡充することで、患者の治療法選択の幅が広がり、より患者のニーズに応える医療の提供が期待できる。

しかし、国保を救済するために、大企業の社員が加入する健保の保険料負担を増やすという安易な方法では、時間は稼ぐことはできても、根本的な解決にはならない。増大する医療費の主な原因は、高齢者医療と生活習慣病の治療費だ。必要以上の医療費が使われていないかを見直すとともに、病院経営を効率化させ、予防医療を強化するなど、根本的な医療費問題の解決策(※)が求められる。

その前提として必要なのは、患者と医療者の両方の意識改革だ。国民一人ひとりが自助努力の精神で自分の健康に責任を持ち、管理すること、そして医療者側も必要以上の医療行為を控え、患者が本来持っている力を引き出す方向で治療を行うことで、行き過ぎた医療負担を適正にすることができる。(真)

※詳しくは、本誌2015年7月号「幸福実現党の設計図2025 第3回『医療負担はもっと安くできる』」をお読みください。

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2015年6月号記事 病院は黒字化できる - 幸福実現党の設計図 2025 第2回

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2015年5月3日付本欄 給料の9%は医療保険? 医療費削減には国民と医療機関の「自助努力」が必要

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2014年10月10日付本欄 医療費が6年連続で過去最高を更新 経営マインドを持った病院が必要

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