台湾が、福島第一原発事故の直後から導入している日本産の食品に対する輸入規制を、15日から強化した。

台湾は事故直後から、福島など5県からの食品の輸入を禁止していたが、今回はこれに加え、日本から出荷される全ての食品に都道府県別の産地証明を義務づけた。また、東京や宮城など特定地域の水産物や茶類産品、乳製品など800品目以上の「高リスク産品」について、放射線検査の証明を必要としている。

日本政府は、規制強化に「科学的根拠がない」と反発。実際、台湾当局が2011年3月から4月末までに検査した食品約6万9千件のうち、放射線量が日台の基準値を超えたものは存在しなかった。だが台湾は、208件で微量の放射能が検出されたとして高リスク産品に指定した。

今回の規制強化の背景には、台湾の人々の強烈な「脱原発」意識がある。今年3月、台北市など4都市で、90%以上が完成し、90億ドル(約9100億円)以上費やした第4原発の建設に反対する数万人規模のデモが発生。これを受けて、建設が中断されるなど、脱原発への動きが盛り上がっている。

だが、台湾が脱原発を進めると、台湾侵略を狙う中国に付け入る隙を与えることにつながる。

台湾当局の試算では、台湾にある電力源の18%を占める原発が4基とも運転を停止すれば、火力発電に頼らざるを得なくなり、電気料金は40%上昇する見込み。もし、中国海軍の機雷などによってシーレーンが封鎖された場合、石油などの燃料が入手できなくなり、台湾のエネルギー供給は危機に陥る。

一方、台湾の馬英九総統は今月8日、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の単独取材の中で、中国との接近政策を擁護する発言をしている。それに先立つ4日には、習近平・国家主席と台湾国民党の朱立倫主席が会談するなど、中国寄りの姿勢を強めている。

日本をはじめとする民主主義国との関係が悪化することは、中台統一を目指す中国の思うつぼだ。今の台湾の姿勢は、台湾が自ら中国との統一を望んでいるかのようにも映る。

また、今回の規制強化については、日本政府の側にも問題がある。

福島第一原発事故で、福島の人々の被曝線量はチェルノブイリの1000分の1以下であり、放射線被曝による死者は1人も出ていない。また、その土地での外部被曝が年間100mSv以下であれば健康に問題はないが、福島のほとんどの地域は、人が生活しても安全だ。こうした事実を、日本政府が積極的に発信しなかったことで、海外の国々が誤解し、台湾のような極端な動きが出ているのだ。

台湾は、エネルギーに対する大局的な視野と冷静さを持って、過度な原発への恐怖心を捨て、日本の食品への輸入規制を取り去るべきだ。同時に、日本も、原発に関する正しい情報を世界に向けて発信し、世界に広がった過度な原発への恐怖心を取り去らなければならない。(泉)

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