南シナ海での埋め立てを進める中国に対抗するため、南シナ海への米海軍の航空機と艦船を使用することを検討していると13日、ウォールストリートジャーナルの電子版が報じた。
同紙によると、カーター国防長官がスタッフに検討を要請した選択肢の中に、中国が領有権を主張し、埋め立てを進めているスプラトリー諸島(南沙諸島)に米海軍の偵察機を派遣し、海軍艦船を同諸島の12海里内に進める選択肢も含まれているという。
米国は、一貫して中国の建設した人工島を中国領土と認めていない。しかし緊張の高まりを恐れ、これまで米軍は、中国が埋め立て工事をした岩礁の12海里内に軍用機や軍艦を派遣していなかった。
現在、南シナ海では各国の埋め立て合戦が進行している。引き金を引いたのは中国だ。
中国は2014年11月頃から、南シナ海のスプラトリー諸島の7つの環礁で埋め立て工事を開始。2つの環礁は埋め立てられ、軍事関係者200人が常駐し要塞化している。また、その内の1つの環礁には約3kmの滑走路を建設中で、将来は軍事利用すると考えられる。米国防省の8日の発表によると、同地域の中国の埋め立て地は4倍に広がったという。
それに対抗する形で、ベトナムやフィリピンも埋め立てなどを進めている。ベトナムはスプラトリー諸島の2か所で埋め立て工事を進め、軍事施設も新設した。フィリピン軍の参謀総長はスプラトリー諸島で実効支配するパグアサ島を訪れて視察し、フィリピン領土であることを示した。フィリピン軍は同島に滑走路を保有し、その滑走路の改修も計画している。
フィリピンは、現在の沖縄のように「米軍撤退」を要求し、米軍のクラーク基地を追い出した過去を持つ。また、ベトナムもベトナム戦争で米国と戦っており、両国とも米国への軍事支援を要請しづらい国だ。
そのような経緯もあり、米国が中国の軍事拡張を断固として防ぐ決意を持ち、本当に、スプラトリー諸島周辺に軍用機ないし軍艦を派遣するかどうかには疑問がある。中国との直接対決を恐れるあまり米軍も動かず、ずるずると時間ばかりが経過し、その間に南シナ海に中国の軍事基地が着々と建設されていく可能性が高いのではないか。
スプラトリー諸島を巡って、中国とフィリピンやベトナムの間で戦争が起き、中国がフィリピンやベトナムの領土の一部を占領する可能性は十分ある。そうなれば、中国の潜水艦は太平洋を自由に航行できるようになり、日本への威嚇ができると同時に、台湾や沖縄を挟み撃ちで占領しやすくなる。日本や米国の危機は非常に高まるだろう。
南シナ海の情勢不安定は、日本の存亡に関わる。日本は、断固としてフィリピンやベトナムを中国の侵略から守る決意を固める必要がある。
海上自衛隊とフィリピン海軍は12日、南シナ海で初の共同訓練を実施した。こうした訓練などを通じて、米国やフィリピン、ベトナムなどとより強い関係を築き、米国にも東南アジア防衛の決意を促し、自衛隊は米軍にできる限りの協力を惜しまないことが大切だ。(泉)
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