中国は南シナ海の岩礁やサンゴ礁などを埋め立て、滑走路などの軍事拠点とみられる施設の整備を加速させている。これに対して、アメリカとフィリピンは新たな軍事協定を結んで連携を強化。フィリピンのルソン島サンバレス州で合同軍事演習を始めた。

軍事演習には昨年の倍にあたる約1万1千人の兵士がフィリピン、アメリカ、そしてオーストラリアから参加し、過去15年で最大規模となる。訓練は、敵に占領された領土に海上から水陸両用車で上陸して奪還するという想定。日本の自衛隊や東南アジア諸国の軍がオブザーバーとして招かれており、国際世論の支持を得ながら中国の実効支配拡大に歯止めをかけたいという狙いがある。

着々と南シナ海の実効支配と軍事拠点化を拡大する中国の野望

南シナ海には、中国やフィリピン、ベトナム、台湾などが領有権を主張している島や礁が点在する。

2012年、中国は一方的に西沙、中沙、南沙の三諸島を管轄する「三沙市」を西沙諸島に設立。この“市"は中国軍用の空港も備える。西沙諸島のウッディ島も中国の軍事基地とされており、13年夏以降、面積を急激に拡大させ、3000メートルの滑走路も建設された。14年5月ごろには周辺で中国による石油掘削を2カ月にわたって行い、ベトナムとの間で緊張状態が続いている。また、中沙諸島にあるスカボロー島では、12年に漁船の操業をめぐり、中国とフィリピンの艦船が2カ月以上にらみ合った。

さらに南沙諸島では、1988年に中国とベトナムが軍事衝突し、多くの島を中国が支配するようになった。95年にはフィリピンが領有権を主張していたミスチーフ礁に建造物をつくり、実効支配を拡大させていた。

中国は2014年11月ごろから南沙諸島付近の7か所で埋め立てを開始。ファイアリー・クロス礁とスビ礁では、周辺の岩礁・珊瑚礁が埋め立て、軍事関係者200人が常駐し要塞化している。この埋め立て地は全長3000メートル、幅200~300メートルほどの滑走路を建設できる広さまで面積を拡大させている。

南シナ海を見れば米軍撤退後の沖縄の運命が分かる

中国とフィリピンやベトナムとの緊張関係は、日本にとっても対岸の火事ではない。日本に輸入される石油の8割は南シナ海を通過するため、南シナ海は日本にとって絶対に守らなければいけない通り道(シーレーン)だ。南沙諸島から中国の軍用機が飛び立つようになれば、中国の軍事的脅威を背景にした政治力や発言力の強化につながることは確実である。最悪の場合は中国がフィリピンを攻撃し、アジアでの局地紛争に発展しかねない。

中国が南沙諸島への支配拡大の背景には、1992年のフィリピンからの米軍基地の撤退がある。フィリピンにはクラーク米空軍基地とスービック米海軍基地があったが、地元の反対で撤退した。

現在日本では、沖縄の普天間基地移設問題で左翼活動家たちが激しく抵抗し、「米軍基地撤退」を声高に叫んでいる。しかし、憲法9条に縛られて、自衛隊が十分に国を守れない今の日本だからこそ、米軍がいることを忘れてはならない。

南シナ海での中国の行動を見ると、沖縄も危ないことが分かる。沖縄の米軍基地撤退を要求するのであれば、米軍が実際に撤退した後に、どのように日本を守るのか、具体的な対策を打ち出さなくてはならない。(真)

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