著名な理論物理学者ミチオ・カク教授が米ニューヨーク市立大学で行った特別講義を、NHKが4月、「ニューヨーク白熱教室 ~最先端物理学が語る驚異の未来~」と題して放送した。ミチオ・カク教授は4回に渡り、物理の歴史や最先端の物理学、未来社会などについて語った。

ミチオ・カク教授は、すべての素粒子は紐のようなものでできているという、「超弦理論」の創始者の1人として知られる。そこから導き出される、パラレルワールドなどのSFに登場するようなアイデアを紹介する著作などでも有名だ。未来予想についても関心が深く、『2100年の科学ライフ』などの著作も持つ。

番組では、物理の歴史や、この世のすべてを説明できる「万物の理論」が完成したらどのようなことが分かるのか、今後数十年で技術はどの程度進化し、生活はどう便利になるのかなどを語った。

今後、期待される分野としては、人工知能やバイオテクノロジー、ナノテクノロジーを挙げた。ナノテクが進化し、脳波計測が精密化・小型化すると、神経が傷ついて身体機能を失った人の脳波を計測することで、つまり、本人にとっては念じるだけでロボットアームを動かすことができるようになるという。また、月面に置いたロボットを、地球上で念じるだけで操作できるようになるとした。科学が描く未来というテーマには、興味深い話が数多く登場した。

ただ、気になるのが、ミチオ・カク教授が、「脳が私たちの意識や心を司っており、脳の謎を解明すればそれが分かる」と考えていることだ。番組の最後で、オバマ米大統領が脳の仕組みを解明するためのブレイン・プロジェクトに、1億ドルの予算を投じて10年間の国家プロジェクトとしたことを紹介。ミチオ・カク教授を始めとする科学者たちは、このプロジェクトで精神疾患も解決できると期待していることを紹介した。

さらには、意識とは脳の中にあるものであり、脳活動のパターンや記憶を読み取り、外部メディアに保存すれば、それはその人の「魂」を永遠に保存できることと等しいと紹介した。例えばチャーチルと話したければ、そのデータを呼び出してホログラム表示すればよくなるという。

脳の研究は必要だが、脳は魂そのものでもないため、脳を解明すれば精神疾患を解決できるわけではない。

人間の本質は魂であり、物質である肉体は、魂の乗り船である。魂こそが思考するエネルギー体であり、精神疾患とされるものの多くは魂の病でもあり、その治療のためには、心そのものと向き合う必要がある。また、脳活動のパターンを分析すれば、生前のその人の考え方の癖を再現できるかもしれないが、新しい事柄についてどんなことを考えるかなど、死後、本人の考え方が変化する部分は反映されない。

唯物論で人間を理解し、唯脳論で解決策を探すだけの科学では、たとえ国家を挙げた研究でも限界にぶつかってしまうだろう。科学の未来は、宗教と融合を目指す中に開かれるはずだ。(居)

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