ロシアが今年3月に行った軍事演習で核兵器の限定的な使用を想定していたことや、昨年3月のクリミア併合の際に核兵器使用の準備を検討していたとプーチン大統領が発言したことに対し、長崎市の田上富久市長と広島市の松井一実市長がプーチン大統領に抗議文を送付していた。その抗議文に対し、アファナシエフ駐日ロシア大使から返書が届いた。

ロシアの返書からわかる「国際社会から見た日本」

その返書からは、国際的な視点から日本がどう見られているかを読み取ることができる。

返書では、ロシアが核拡散防止条約(NPT)体制を支持し、核兵器のない世界を目指しているとした上で、「日本がどこの国の『核の傘』に依存しているかはよく知られています」と、日本がアメリカの核兵器の抑止力に国防を依存していることを示唆した。さらに、両市長の抗議文の中には広島と長崎に核爆弾を落とした国について言及がないことを指摘し、「その国こそ、抗議の対象ではないでしょうか」と結んでいる。

ともすれば、「日本は核兵器とは無関係」と感じがちだが、国際社会では、日本がアメリカの「核の傘」の中にいることは常識だ。また、広島と長崎に原爆が投下された責任が日本にあるかのように錯覚した「反省」が、日本側から述べられることがあるが、原爆を投下したのはアメリカだ。

ただ、広島と長崎はアメリカにも抗議している。広島県は1968年以降、米国に243回、ロシアに188回の抗議文の送付を行っており、長崎県は1995年以降、アメリカに58回、ロシアに8回送っている(広島は2014年11月4日時点、長崎は2015年3月24日時点)。

しかし今、アジアで核戦争を始める危険性が高い国は、ロシアとアメリカではない。ロシアは脱共産主義化して連邦制となっており、ソ連崩壊以降、経済力も低下。核を盾に世界覇権を目指す力は残っていない。

着々と核武装を進める中国と北朝鮮

そうした中、着々と核武装を進めているのが、中国と北朝鮮だ。

中国は、毛沢東政権下で1955年から始まった「100年の計」に基づいて、世界の覇権国家を目指してきた。中国は、抑止力として核兵器を保有するのでなく、実際に使用する可能性がある。なぜなら、唯物論・無神論の指導者は人を殺すことを躊躇しないからだ。核兵器によって多くの人が死んでも、「地球上の人口が数億人減っただけだ」と良心の呵責も感じないだろう。実際、毛沢東はそうした趣旨の発言をしたという。

2000年代以降、中国の核兵器の近代化は進んでいる。2014年には、中国人民解放軍が、核弾頭を多弾頭化し、アメリカ全土を射程距離におさめる多弾頭式・大陸間弾道ミサイルのテストを行っている。これは、最悪の場合、中国が台湾などに奇襲攻撃をかけ、アメリカが中国に対して軍事介入してくれば、アメリカ本土に対して多弾頭式の弾道ミサイルで反撃できることを意味する。

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が発行している『SIPRI年鑑』(2014年版)によると、2014年1月の中国の核弾頭の総数は約250発(保有数が最大3000発と見る米国の研究もある)、北朝鮮は6~8発と見られる。中国や北朝鮮のような、共産主義に凝り固まった指導者が存在する国が、毎年核兵器の数を増やし、近代化を続けているのは、恐ろしい状況だ。

広島・長崎が抗議すべきは中国と北朝鮮

広島や長崎が抗議すべき国は、ロシアやアメリカではなく、中国と北朝鮮だろう。だが、広島・長崎市は、1997年以降、中国の核開発に抗議をしていない。

広島・長崎が、核兵器の削減を求めることは大切だ。アメリカやロシアなどは、必要数以上に核兵器を保有しており、その数を削減していくことは望ましい。だがそれ以上に、中国、そして北朝鮮に対して、「侵略的意図を持って核兵器を使うことが、二度とあってはならない」というメッセージを出し続けるべきである。(泉)

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