ジャーナリストの立花隆氏が、臨死体験について世界の研究者を訪ねながら、最新の研究成果を紹介していく様子をまとめた、「シリーズ 死ぬとき心はどうなるのか 立花隆“臨死体験"を追う」がNHKのBS1で、24~26日の3夜連続で放送された。昨年、NHK総合で放送された「死ぬとき心はどうなるのか」に未公開映像を加え、再編集されたものだ。

番組では、臨死体験が、最新の脳科学の研究により、脳の働きで説明ができるとした。例えば、臨死体験をした人の多くが、体験中に強い幸福感を感じるのは、死に瀕するときに脳内の辺縁系と呼ばれる部分が化学物質を大量に出すからであり、また、体外離脱の感覚は、脳内の側頭葉が刺激を受けたときに生じやすいという。自分の意思で夢の内容を操ることができる、明晰夢という夢についても触れ、臨死体験はこの明晰夢に近いとした。

しかし、脳の働きで説明できない臨死体験や神秘体験の事例はたくさんある。脳神経外科の世界的権威であるエベン・アレグザンダー医師は、自身の臨死体験の中で、その存在も知らなかった生き別れた妹と会ったという。また、ある男性は、手術中、医師の行動を見たと証言しており、その内容は手術室からは知る由もない情報だった。

最新の科学の知見を追うのは興味深いが、結論として、「死後の世界があるのかないのかは分からない」というところで終わっているところが残念だ。

番組のおわりに、立花氏は、臨死体験の調査を通じて「死が怖くなくなった」と語った。確かに、死の瞬間に限れば、脳内の化学物質により幸福感を感じることが分かったから、本当にそう思ったのかもしれない。しかし、死後に待っているものが、あの世なのか、無なのか。これについて明確な答えがないまま、「死は怖くない」というのは、強がりのように聞こえる。

あの世はあるか、ないか、結論はどちらかだ。あの世の存在を信じ、死後は天国に行きたいと願い、思いや行動を整えて生きるか。あの世はないと信じて、生きるか。「死への恐怖」が気になる立花氏はそろそろ、あらゆる臨死体験を合理的に説明できる「死後の世界」の存在を認めるべきだ。(居)

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2014年10月23日付本欄 「死が近しいものになってきた」から怖くないという立花隆氏 あの世の研究は十分ですか

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2014年10月号記事 NHKへの公開質問状 なぜ超常現象を否定したいのですか?

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