イギリスがこのほど、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加することを表明したことが波紋を呼んでいる。それに追随するように、フランス、ドイツ、イタリアも参加意思を示したことを、16日付英フィナンシャル・タイムズ紙(電子版)が報じている。
これに続き、オーストラリアや韓国も参加を検討しているという。
アメリカは、同盟国に対して、AIIBに参加しないよう働きかけてきたが、イギリスが参加表明を示したことで、「堤防が崩れた」感がある。
英テレグラフ紙によると、英首相デビッド・キャメロン氏は「我々がアメリカと違うアプローチをとることもあり得ます。これは、イギリスの国益に適うものです」と発言したという。
これに対し、米国家安全保障会議のパトリック・ベントレル氏は、「新しい国際機関は、世界銀行や地域の開発銀行の高い標準を取り入れるべきだと思います。多くの協議の結果、我々はAIIBが、行政、環境、社会保障の面でその標準に達していないことに懸念を抱きます」とした。
フィナンシャル・タイムズ紙によると、米豪の政府高官の間で、「イギリスが経済的な動機で動いており、アジア太平洋地域の地政学的な状況を理解していないのではないか」との懸念があるという。
本欄でも言及してきたが、AIIBは、アジアで影響力を増強しようとしている中国の覇権政策の一環であり、欧米主導の世界銀行や日本主導のアジア開発銀行に対抗するためのものだ。その意図は、アジアにおける経済システムを中国色に塗り替えることである。
つまり、中国は、自分たちの「思想統制」「人権侵害」「軍事拡張」を隠すために、金の力で友好国を作ろうとしているのだ。
確かにイギリスは、中国との経済関係を優先させるために、チベットのダライ・ラマとは今後会わないことを表明し、香港の「雨傘革命」の際には中国への批判を避けてきた。また、他のヨーロッパ諸国も中国の高成長経済に便乗することで自分たちの経済成長を促そうとしている。
自国の経済発展を追求するのは結構だが、先進各国には、アジア地域の情勢を正しく認識し、経済的な問題だけに固執せず、中国が現在行っている侵略行為、人権侵害、そして他民族の迫害などから、目を背けることがないように願いたい。(中)
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2014年10月20日付本欄 中国主導の「アジアインフラ投資銀行」
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