毎年恒例の「世界の悲惨な国ランキング」を、米ケイトー研究所がこのほど発表した。

同ランキングは、「インフレ率」、「失業率」、「貸出利率」の三つを足し、「一人頭のGDP」を引いた数字を基に作成されている。この数字が高いほうが、より「悲惨」であるということだ。前者の三つは、数値が高ければ高いほど生活が困窮していることを意味し、「一人頭のGDP」は国民の豊かさを示す。

調査は108国を対象としており、最下位の5カ国(最も悲惨ではない国々)は、日本、台湾、中国、スイス、ブルネイが104位から108位を占めている。

肝心の「最も悲惨な国々」だが、1位から5位は次の通りだ。

  • 1位 ベネズエラ 106.03点
  • 2位 アルゼンチン 68.00点
  • 3位 シリア 63.90点
  • 4位 ウクライナ 51.80点
  • 5位 イラン 49.10点

特筆すべきは、1位のベネズエラが2位のアルゼンチンに40点近くの差をつけ、ダントツに「悲惨」だということだ。

なぜ、シリアやウクライナのように、内戦や紛争の真っ只中にいる国々より、ベネズエラのほうが「悲惨」なのだろう。

以前から本誌でも言及してきたが、ベネズエラは原油価格の暴落と社会主義政策のため、60%以上のインフレ率と、生活物資の欠乏が目立っている。富の創造ではなく分配にばかり気を取られ、新しい産業を生み出さない国は、唯一好調な産業が低迷したとき、窮地に立たされる。ベネズエラはこの“模範的"な例と言えるだろう。

また、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は、対立する政治家に言いがかりをつけて逮捕するなど、独裁的な傾向を見せている。政府がお金をばらまいて国民の面倒を見ることは、一見「優しい」国のようにも見える。しかし、政府側の人間が保身を優先させたり、悪意を持っていた場合、生活を管理されている国民側は抵抗する術を持たなくなる。

もっとも、政治的な弾圧がベネズエラより強い国はいくらでも存在する。圧政が特に顕著な中国がランキングの下位にくるのは、この調査が経済的な側面を強調したからだろう。原油の輸出などで一時的な発展を実現したとしても、国民の自由を基盤としない繁栄が長続きすることはない。

経済的な困窮ももちろん重要な基準の一つではあるが、政治的・思想的な弾圧も「悲惨さ」の定義に入ることを忘れてはならない。(中)

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2015年1月号記事 実は「自由」でない日本―「自由の大国」を目指して(Webバージョン) - 編集長コラム

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