イスラム過激派組織「イスラム国」に拘束されていたヨルダン軍のパイロットが殺害された映像が3日公開された。ヨルダンは報復として、イスラム国が後藤健二さんと引き換えに解放を求めていたサジダ・リシャウィ死刑囚を処刑したと発表。各国政府は日本人人質が殺害されたとされる事件に続き、イスラム国を非難する声明を相次ぎ発表している。

そんな中、アメリカの国防総省は、2016年度の国防予算案として、基本予算と別枠で「イスラム国」の掃討作戦に総額53億ドル(日本円で約6200億円)を計上。うち13億ドルは、地上作戦を繰り広げるイラク軍と、シリアの穏健反体制派への装備と訓練費になるという。

有志連合による空爆強化も

ただ、オバマ米大統領は依然として自国の軍が地上戦に入ることは避けたいようだ。オバマ大統領は、米NBSのインタビューで「(現地に)20万、30万の米兵を派遣するのは可能だが、イラクやシリア、アフガニスタンの国内で自ら戦う意思と能力を持つ人々がいなければ、いかなる前進も最後は消えてしまう」と話し、地上戦はあくまでも現地の兵力に委ねる意向だ。

2014年8月から、有志連合により行われているイスラム国に対する空爆で、民間人の死者は万の単位にのぼるとみられている。オバマ政権は今月19日、各国の閣僚級を招いてワシントンでテロ対策の会合を行う予定だが、今後、さらに空爆が強化される可能性もある。

イスラム国は絶対悪なのか

日本としても、イスラム国がさらに広がり、アフリカやアジアまでが飲み込まれていくことを避けるため、「テロに屈しない」姿勢は必須だ。

しかし一方、イスラム国が絶対悪とも言い切れない。

その理由は、イスラム国が勢力を拡大した背景にアメリカの動きがあるためだ。イラクに米軍が入り、シーア派政権となったことで、それまでフセイン政権を支えていたスンニ派が弾圧された。イラク北部に追いやられたスンニ派が、シーア派に対抗するためにイスラム国と結びつき、急速に支配地域を拡大した。

こうした状況を考えれば、少なくとも、スンニ派の住民が安全に生活できるよう、国際的な協力を行う必要があるだろう。

また、中東地域は第一次大戦後、ヨーロッパ諸国の支配下に置かれた歴史がある。そのため、中東各国の国境線は、支配国の都合で民族や宗派に関係なく引かれてしまった。シリアとイラクの国境を超えて広がるイスラム国の台頭は、欧米が続けてきた中東支配に対する反動という面もある。

中東と、かつての日本には共通点も

日本は第二次大戦で「アジアを侵略した悪の国」とされ、原爆を投下されて数十万人が亡くなった。イスラム国への空爆も、欧米側の論理によって何万人もの民間人が殺され続けているという意味では、似たような状況を日本は経験しているとも言える。だからこそ日本には、今後、欧米とイスラム教圏の双方を理解した上で、両者が共存できる「正義」とは何かを発信する使命があるのではないか。(晴)

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