スリランカの大統領選で、野党統一候補のマイトリパラ・シリセナ前保健相が、現職のマヒンダ・ラジャパクサ大統領を破って初当選を決め、10年ぶりの政権交代を実現した。

シリセナ氏は選挙期間中、中国依存のラジャパクサ政権を批判し、「インド、パキスタン、日本といった国々とも関係を強化すべきだ」と主張。中国が開発を進める首都コロンボの「港湾都市プロジェクト」を見直す考えを示すなど、バランスのとれた外交を目指す。

破れたラジャパクサ政権の功罪

今回破れたラジャパクサ氏は、2005年から15年まで2期10年にわたり大統領を務めた。その間、09年に反政府勢力「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)」を制圧し、26年間続いていた内戦を終わらせた功績もある。

だが、内戦時に政府軍が多くの民間人を殺害した容疑をめぐって、国連から人権侵害の問題を指摘されていた。国際社会から孤立しかかっていたラジャパクサ政権は、軍事面・経済面での援助を中国に頼り、共存関係を築いてきた。例えば、中国政府は、ラジャパクサ氏の地元選挙区である南部ハンバントタに、港湾や空港を建設、巨額な融資を行ってきた。

ちなみに、日本政府は、長年にわたりスリランカに政府開発援助(ODA)などの供与を続け、スリランカにとって最大の支援国だったが、09年にその座を中国に奪われている。

数年前に、日本から政権交代への布石が打たれていた!?

スリランカは、国民の約7割が仏教徒で、その他、キリスト教徒、ヒンズー教徒、イスラム教徒などがいて、国民の約99%が何らかの宗教を信じている。

大川隆法・幸福の科学総裁は2011年11月、このスリランカを訪れ、1万3000人の聴衆を前に、「The Power of New Enlightenment(新しき悟りの力)」と題し、英語で講演した。以下は、その一部だ。

「もし、悪人がたくさんのお金を稼ぎ、この世を支配し、統治するようになれば、善人は、常に、悪人から迫害されるようになります。これは、よい状態ではありません。(中略)善人には、富を受ける権利が十分にあるし、豊かになる資格もあります。善人が十分な経済力を持てば、当然、この世ではよい仕事ができるようになります。そして、善人が社会で出世できることができれば、この世は天国により近くになるのです。これはよいことです」

中国の脅威を暗示したような内容だが、この講演の様子は、地元の新聞・テレビ・ラジオ計20社が報じ、スリランカ全土に伝えられた。

さらに、2012年6月、大川総裁が製作指揮した近未来予言映画「ファイナル・ジャッジメント」が日本で公開されたが、同8月にスリランカでも公開。この映画は、日本がアジアの軍事独裁国家に侵略され、占領下で自由を奪われるという悲惨な近未来を描いている。ヒロインのリン役を、スリランカのトップ女優のウマリ・ティラカラトナさんが演じたこともあり、スリランカでも注目を浴び、コロンボ市内やスリランカ航空の機内でも上映され、大きな反響を呼んだ。

こうした背景を考えると、今回の大統領選には、日本からのメッセージが大きく影響していたと言えるかもしれない。

今回の大統領選に際して、現地の日本企業関係者に話を聞くと、「ラジャパクサ政権が終わると、これまで進めてきた公共事業がストップする懸念がある」と不安をもらしていた。だが、スリランカが中国依存を強めることは、長期的に、日本やアジア地域にとってマイナスだ。

インド洋に面したスリランカは、中東から日本に石油を運ぶシーレーン(海上交通路)上に位置する。中国は海軍を強化してシーレーンへの影響力を拡大しようとしているが、それを阻止するためにも、日本は安全保障や経済面でのより一層スリランカとの関係を深めていく必要がある。

【関連記事】

2012年1月号記事 大川隆法総裁 海外巡錫レポート in スリランカ

http://the-liberty.com/article.php?item_id=3386

2013年1月20日付本欄 映画「ファイナル・ジャッジメント」「神秘の法」が世界で話題に

http://the-liberty.com/article.php?item_id=5485

2012年7月号記事 近未来予言映画 「ファイナル・ジャッジメント」が描く日本の危機

http://the-liberty.com/article.php?item_id=4309

2012年6月号記事 映画「ファイナル・ジャッジメント」の魅力

http://the-liberty.com/article.php?item_id=4202