衆院選で、自民党の議席が300を超えるという予測が広がっている。憲法改正の発議にも手が届こうという中で、「安倍政権は憲法を変える気だ!」と、危機感をあらわにした報道や意見も出はじめている。

10日付中国新聞は、自民党が単独で317議席を獲得して3分の2以上になる可能性も出てきたとし、これにより衆議院で憲法改正の発議をできると指摘。すでに閣議決定された集団的自衛権の行使容認に触れ、「『積極的平和主義』の名の下、こちらが武力行使のハードルを下げれば周辺国の軍拡をさらに助長しよう」との懸念を示した。

ある野党議員は自身のブログに「驕る安倍政治にブレーキを」と題して、自民党が300議席を超えることで「(安倍晋三首相の)独善がますますひどくなる」恐れがあると書いている。ここでは、安倍首相の念願の憲法改正も想定している。

憲法改正ができる環境が整うのはいいこと

しかし、憲法改正ができる環境が整うこと自体はいいことだ。

なぜなら、現行憲法は、第2次大戦の敗戦時に、日本を武装解除した状態で維持するよう戦勝国が強制したもので、戦力や交戦権を持つことなど、普通の国が普通に持っている権利を認めていないからだ。

そもそも現行憲法の前文に、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とあるが、そうした文言が通用する国際環境は幻に過ぎない。

護憲派の平和を求める気持ちもわからなくはないが、核実験やミサイル実験を繰り返す北朝鮮や、年2ケタの軍拡を続け、南シナ海などで衝突を繰り返す中国が暴走したとき、適切な備えもなく対応できるというのだろうか。

集団的自衛権の行使容認だけでなく、改憲が必要

また、7月の集団的自衛権の行使容認により、自衛隊の行動範囲は広がったが、自衛隊が現在も憲法に法的根拠を持たない組織であることに変わりはない。

集団的自衛権の行使容認に伴い、日本の国益が危機にさらされる事態についていくつかは議論されたが、実際に起きうるケースはもっと多いはずだ。日本が攻撃を受けた際に、内閣を招集して何日も議論しなければ動けないのでは、手遅れになってしまう可能性が高い。自衛隊法の改正や、省庁が互いにどのように連携するかのシミュレーションなど、憲法を改正した上で、国としてすべきことは山積している。

中国の軍事拡張ははなはだしく、アメリカの軍事費の削減は軍事作戦に影響を及ぼすレベルまできている。

今回の選挙における自民党のマニフェストには、「憲法改正」の項はあるものの、何をどのように改正するかは書かれておらず、「9条」の文字もない。しかし、安倍首相の言う「美しい国」を守るには、憲法改正は急務だ。(居)

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2014年7月1日付本欄 集団的自衛権の行使を認める閣議決定は当然 幸福実現党が声明を発表

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