中国で、大学における「学問の自由」が制限されようとしている。中国の地方紙「遼寧日報」は記者を大学に潜入させ、講義内で度を越した中国批判がなされていることを確認したとし、中国政府の政策について「好き勝手に批判したり、罵ったりするな」と伝えたと、産経新聞などが報じた。

当局は10月に、大学の教育に対し「マルクス主義法学思想と社会主義法治理論」を重視し、「社会主義の核となる思想を学生にもたらすべきだ」などの指針を発布した。

記事によると、「遼寧日報」は10月下旬、ある学生から、講師が政府の政策を公然と批判しているという情報を受け、北京や上海、広州などの20校の大学の講義に記者を潜入させた。その結果、「教授らの広範な知識や研究態度、責任意識には感動したが、中国批判も存在し、度を越したものさえあった」とし、「中国の問題点を論じるのはかまわないが、明確かつ客観的でなければならない」と訴えた。中国メディアは同紙の主張に同調しているが、大学教師らは、「教室は自由に意見交換できる場だ」と反発しているという。

中国メディアは基本的に党の主張を代弁するものであり、今回の報道は、「党の指針を徹底せよ」というメッセージだろう。しかし、ある発言が「明確かつ客観的」かどうかは、国が判定することではない。今回の件で、学問の自由が侵されようとしていると大学教師が危機感を持つのは当然だ。

権力の掌握を進める習近平・中国国家主席は、毛沢東主義への回帰を打ち出しており、香港の民主化デモに対して要求に応じなかったり、共産党員の宗教を禁止するなど、人々の自由を制限する傾向を強めている。

しかし、当局の意見や方針が絶対に正しいと考えるよう強制する体制は、人々の幸福を奪い、思想の多様性による自由なアイデアが生まれる余地をなくしてしまう。さらに言えば、文化大革命のような悲劇をも繰り返しかねない。

習氏の方針は、大国として認められることを求めている中国にはふさわしくない、文明としての退化をもたらすものと言える。(居)

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