個人消費の回復の遅れを指摘された甘利明経済財政・再生相は25日の記者会見で、「賃金の引き上げが一回きりで終わってしまうのではないかという不安が財布のひもを締めている」と発言した(25日付日経新聞WEB版)。

安倍晋三首相はこのほど、企業に2度目の賃上げ要請をした。景気が冷え込み、2014年のGDP成長率がマイナスとなる見込みになったのは、賃上げへの期待感が低いからだと判断したのだろう。

賃上げ依頼は2013年7月にも行っており、名目賃金はその分増えたものの、消費増税に加えて、円安による輸入品の値上がり、天候不順による野菜の値上がりなどあり、実質賃金は下がっている。賃上げの効果を実感するどころか、とりわけ消費増税の大打撃を痛感している国民が多いのが実情だ。

そもそも、政府が民間に賃上げ要請をするなど、自由主義経済からほど遠いと言わざるを得ない。アベノミクス第3の矢の「規制緩和」どころか、企業の経済活動を「規制強化」しているようなものであり、全国民を公務員化する道といえる。これで景気が良くなるなら、社会主義・共産主義国家は破たんなどしなかっただろう。

大川隆法・幸福の科学総裁は21日に収録した法話「資本主義の未来」において、マルクス経済学はそのほとんどが間違いではあるものの、正しい記述が一部分あり、それは「賃上げ要請をすると、大恐慌が起きるということを、マルクス経済学では書いてあります」と紹介。

賃上げをすると企業の余剰利益が減り、企業は赤字となって倒産するため、失業者が街にあふれて大恐慌がやってくると説明していると語った。

賃上げすれば企業は当然支出が増え、その分だけ設備投資などが先延ばしになる。ここで経済効果が相殺されるばかりか、企業の先行きに不安を感じた従業員は防衛策として増えた賃金を貯金するため、消費全体ではマイナスになりかねない。

消費増税に相まって、2度目の賃上げ要請などすれば、日本は大恐慌に陥る危険性が高い。

7~9月のGDP成長率が年率換算でマイナス1.6%になり、2014年を通してマイナス成長になる可能性が高まっているが、それは決して、「想定外」ではなかったと言える。

アベノミクスは今や、完全に経済成長と逆方向を走っている。必要なのは、消費増税の延期ではなく中止させ、5%に戻すと決断すること。そして、規制緩和で民間の自由度を増すことだ。(居)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『忍耐の時代の経営戦略』 大川隆法著

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2014年3月号記事 アベノミクスは共産主義化した? (Webバージョン) - 編集長コラム

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2013年7月9日付本欄 政府が最低賃金引き上げへ 企業に負担を頼むだけでいいのか

http://the-liberty.com/article.php?item_id=6298