中国とロシアがこのほど、北京・モスクワ間に高速鉄道を建設するための了解覚書を交わした。

この開発計画は2300億ドルかかると推定され、1954年に設置されたシベリア鉄道をつかって6日かかる7000キロの旅を、2日以内に縮めることができる。欧米の経済制裁に対抗するために、最近ロシアは中国に接近しているが、今回の合意は、両国のつながりが強化された形だ。

中国は世界で一番大きな高速鉄道ネットワークを誇っているが、これは、フランスのアルストム、ドイツのシーメンス、日本の川崎重工などから知的財産を盗用した技術で創られたものだ。実際、川崎重工やシーメンス社は、高速鉄道技術の盗用で中国側に抗議している。

今度は、その技術を、トルコ、ベネズエラ、ロシアなど、海外に輸出して利益を得ようとしているだけでなく、ロシアを引き込んで、日本が構築しようとしている中国包囲網を破ろうともしている。

他国から盗んだ技術を売って利益を得るとは耳を疑うが、こういった所業は日本だけでなく欧米企業の不信感も買っている。現に、中国は現在国内の高速鉄道をさらに進化させようとしているが、ドイツ企業に技術提供を拒まれている。川崎重工や他の日本企業も、中国の知的財産盗用に懲り、撤退を始めている。

基礎科学や研究の段階を飛ばしている中国は、自ら新しい技術を作り出すことができない。その上、他国の不審を買ったのでは、長期的に見ると、中国は技術開発で他国に遅れを取ることになるのではないか。実際、現在中国の高速鉄道の平均速度は最高時速400キロ程度に対し、今度東京-名古屋間をつなぐリニア新幹線の速度は、最高時速500キロである。

日本は、もう少し危機管理意識を持ち、自らの知的財産を守る努力をする必要がある。しかし同時に、たとえ中国のような盗用技術の前に、短期的には市場進出で遅れをとっても、自国の技術力を地道に向上させてゆけば、世界のニーズを満たすことができるだろう。

また、安全保障上も、日本は自国の高性能で安全なリニアシステムや制度をロシアとの関係改善に使うべきだろう。2011年7月、40人もの死者を出した中国の鉄道事故を見ても分かるように、技術を真似ても、それを扱う人間や安全制度などを真似るのは簡単ではない。その中国と共同開発するほどロシアは窮しているのだろう。

日本の技術は中国の軍事拡張主義と覇権政策に対抗する力として使用していきたいものだ。 (中)

【関連記事】

2014年10月18日付本欄 【各紙拾い読み】 リニア着工ゴーサイン 日本を豊かにする「交通革命」に期待

http://the-liberty.com/article.php?item_id=8577

2014年7月6日付本欄 超電導を未来産業に 通常の電車を超電導で走らせる

http://the-liberty.com/article.php?item_id=8103

2014年5月9日付本欄 新幹線で世界進出を目論む中国 日本は新幹線・リニアの技術で世界に貢献を

http://the-liberty.com/article.php?item_id=7814