アメリカとフィリピンの間で4月に結ばれた防衛協定が、フィリピンで反対派の抵抗に遭っている。協定が憲法違反の疑いがあるという理由で、最高裁に訴訟が持ちこまれているためだ。このほど米ウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)が報じた。

4月に結ばれたこの協定は、フィリピンへの米軍の展開を強化するもの。米軍がフィリピン軍の基地を使えるようになり、基地内に独自の施設の建設もできる。米軍部隊も巡回派遣する。

しかし、どれぐらいの規模の部隊が、どの基地を使うかなどといった協定の詳細については、米比両政府の協議がストップしているという。比上院を通過していない同協定は憲法違反だと主張するフィリピンの活動家や学者らが、最高裁に違憲判断を求める訴訟を起こしているからだ。

WSJは、協定の履行が数年間遅れかねないと危惧するフィリピンの防衛省高官の声を、次のように紹介している。

「オーストラリアとの防衛条約は2007年に結ばれたが、法的な障害によって、2012年まで批准することができなかった」。そう話し、アメリカとの協定も似たような遅れに直面するかもしれないと示唆した。

米軍は1992年までフィリピンに駐留していたが、住民の反対運動などに遭って撤退を余儀なくされた過去がある。当時は、冷戦終結によってソ連を筆頭とする共産主義国の脅威が去った後だったが、今や状況は変わった。中国が南シナ海での圧力を強める中で、軍事的に劣勢に置かれているフィリピンは、どうにか自国の領土や主権を守る術を探らねばならない。

アメリカとの協定は、中国が南シナ海での圧力を強める中で結ばれたもので、米軍をこの地域に引きとめて、中国の脅威により強固に対処しようという意味合いがある。住民の反対運動に振り回されて、国全体の守りが危うくなる事態は防がねばならないだろう。それは米軍の普天間基地移設問題で揺れる沖縄にも通じることだ。

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