立命館大学と中国の大連理工大学が今月、「国際情報ソフトウェア学部」を共同で開設した。同学部は、情報技術(IT)分野での国際人材育成や、東アジア地域での国際的な教育拠点をつくることを目的に設立された。将来的には、中国企業との共同研究も目指すという。

基本的には、立命館大学情報理工学部のカリキュラムを中心に運営され、立命館大から年間約20人派遣される教員が、大連理工大の同学部の授業の3分の1を日本語で講義する。さらには、1学年100人のうち上位40人は3年次から立命館大に転入し、両校の単位を取得できることになっている。

この試みについて立命館大は、「日本初の大学教育の本格輸出」と意気込み、優秀な留学生の安定受け入れを期待している。

確かに、国際人材の養成が進む点は評価できるが、今回のケースを、手放しで喜ぶことはできない。

大連理工大は、中国教育部(日本の文部科学省に相当)が直轄する国立大学で、中国政府が重点整備する100大学に選ばれている。大学のある大連市は、「中国のシリコンバレー」と呼ばれ、大連理工大はIT・ソフトウェア企業への人材供給源になっている。

その中には、国営企業化している企業もある。

例えば、中国の通信機器会社・華為技術(ファーウェイ)は、中国人民解放軍総参謀部出身のエンジニアがつくった会社であり、アメリカやドイツからスパイ行為の危険性を指摘されている。

米下院情報特別委員会は2012年10月、米企業に対して同社との取引を控えるよう求めたほどだ。同委員会のマイク・ロジャース委員長は、「ファーウェイの通信機器が真夜中に勝手に作動し、大量のデータを中国に送信している」との懸念を示した。その後、ファーウェイは13年4月にアメリカ市場から撤退している。

このような怪しい企業に、国際情報ソフトウェア学部の卒業生が就職して、"スパイ活動"に従事する可能性も十分に考えられる。

インターネット空間は、陸・海・空・宇宙に続く「第5の戦場」と呼ばれている。サイバー攻撃を、従来のような武力を伴う戦争と同等に見るのが世界の流れだ。

実際に、中国から攻撃された国は多く、アメリカではサイバー攻撃による企業へのスパイ容疑で、中国軍関係者5人を訴追している。また日本でも、政府機関や企業でサイバー攻撃を受けたパソコンの9割が、中国のサーバーやサイトに強制的に接続されていることも明らかになっている。

中国が覇権拡大の野心をむき出しにしている中で、結果的に日本の国益を損なうことのないような大学教育が望まれる。(飯)

【関連記事】

2012年10月9日付本欄 中国の電子機器大手を米議会が「国家の脅威」に指定 日本は大丈夫か?

http://the-liberty.com/article.php?item_id=4989

2012年10月8日付本欄 中国との諜報戦争はすでに始まっている

http://the-liberty.com/article.php?item_id=4986

2012年5月29日付本欄 スパイ活動の中国外交官 出頭要請を拒否して帰国

http://the-liberty.com/article.php?item_id=4373