NASAがこのほど、米ボーイング社と米スペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ(スペースX)に、国際宇宙ステーションに乗組員や物資を運ぶ「宇宙タクシー」の開発・試験・運営を発注した。2017年までに輸送を開始する予定で、契約額は約7300億円相当となる。

アメリカ・ロシア・日本・欧州が共同運営している国際宇宙ステーションへの人材の輸送は、現在、ロシアのソユーズに依存している。アメリカにとって、スペースシャトルの引退以降、自前の輸送船の保有は悲願である。

さらに日本も、国際宇宙ステーションに物資輸送を行う「こうのとり」の2機追加を決め、予算を計上する。これまで日本は「こうのとり」を7機打ち上げる予定だったが、アメリカなどの強い要望で追加。「こうのとり」は時間通りに打ち上がるという点で国際的な信用が高く、時間が限られている宇宙ステーションのミッションにおいて重要な役割を担っている。

現状、アメリカも日本も、宇宙開発関連の予算削減に悩んでおり、有人宇宙飛行の分野では成果が芳しくない。日本も、2020年までに宇宙ステーション計画に参加することを決めているが、それ以降は撤退する可能性も出ている。

その一方で、中国は着々と有人宇宙飛行技術や宇宙滞在の技術向上を進めており、このほど、22年に独自の宇宙ステーションが完成すると発表。既に無人宇宙実験室の「天宮1号」を打ち上げているが、16年頃に「天宮2号」を打ち上げ、18年頃には宇宙ステーションのコア・モジュールを打ち上げる予定という。

中国は平和目的に宇宙開発を行っていると主張しているが、軍事的拡張を続ける同国の行動には警戒せざるを得ない。米国防総省は、6月に発表した中国の軍事動向に関する年次報告書で、中国が紛争の発生時に、敵による宇宙施設の利用を制限・妨害する能力を高めるための「多次元プログラム」の開発に取り組んでいると指摘している。

ロシアも国際宇宙ステーションから20年までに撤退するという意向を示す中、宇宙開発における中露接近の可能性も不安材料だ。

そうした意味でも、日本は有人宇宙開発にこれ以上遅れを取るわけにはいかない。これまで日本がアメリカ・欧州・ロシアと築いてきた協力関係は、宇宙においても中国包囲網作りの一貫となることが望ましい。これは、将来の月や火星への有人探査が平和目的で行われるためにも必要なことだ。

また、有人宇宙飛行の技術は日本の新しい基幹産業になる可能性を秘めており、安全保障上の意味も大きい。国際宇宙ステーション事業をはじめとした有人宇宙飛行技術に関して、政府は「投資」として予算を増やすべきではないか。(晴)

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