安倍晋三首相とインドのモディ首相はこのほど、日本による政府開発援助(ODA)を含む約3.5兆円規模の投融資の実施や、原子力協定の妥結に向けた協議の加速、海上共同訓練の定例化などを盛り込んだ東京宣言に署名した。両国関係を、「特別な戦略的グローバルパートナーシップ」に格上げすることで一致。事実上の"準同盟国"と位置づけた。

1日の講演で、モディ首相は、「18世紀にあったような拡張主義がみられる。ある地域では、ある国が他国を侵略している。海を侵害し別の国を占領しているところもある。こうした拡張主義は人類に発展をもたらさない」と述べ、領土拡張を続ける中国を暗に批判。9月に同国の習近平国家主席が訪印することを考えれば、この批判は、かなり大胆なものと言える。

このように、日印は、中国を念頭に経済・防衛の連携を強化した。さらに注目すべきことは、モディ首相が、同日の夕食会で語った「インド人が日本に来てパール判事の話をすると尊敬される。自慢できることだ。パール判事が東京裁判で果たした役割はわれわれも忘れていない」というコメント。

パール判事と言えば、先の大戦後に開かれた東京裁判で、「連合国側がつくった事後法で日本を裁くことは国際法に反する」とし、被告人全員を無罪にすべきと主張した人物。従軍慰安婦などをめぐって、韓国やアメリカ、国連が対日批判を強める中、インドの首脳が日本を擁護したとも取れる発言は、踏み込んだものと言える。経済などの実利のみならず、歴史観まで共有できるインドは、日本にとって心強い援軍だ。

しかし一方、インド大手紙「タイムズ・オブ・インディア」が8月中頃、「日本軍はインド人捕虜を人肉食にした」と報じたように、ありもしない虚構の事実がインド内でも広まろうとしている。ちなみに、このインド紙は、従軍慰安婦に関する「誤報」を垂れ流した朝日新聞と提携している。もし、朝日新聞が他国のマスコミにまで悪影響を与えたとすれば、同紙の罪は極めて重い。

モディ首相は講演で、「仏陀の教えを守り、開発を信じる者は、平和と発展の保証を得る」と発言。領土拡張だけでなく、宗教弾圧を加える中国からすれば、触れられたくない話題だ。世界を代表する仏教国の日本も、中国に宗教的な観点から一喝を与えるべきではないか。(山本慧)

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