オーストラリア人夫婦の依頼でタイ人の代理母から生まれた双子のうち、ダウン症で生まれた男の子を、依頼者が引き取らなかったというニュースが波紋を広げている。代理母の女性は「赤ちゃんを手放すことはしない」と、今後男の子を育てていくつもりだという。

代理母は、妊娠7カ月ごろに男の子がダウン症であることを医師と仲介業者から知らされ、中絶を薦められたという。タイ人女性は「あなた方は本当に人間か」と拒否し、双子を出産した。

一方、オーストラリア人夫婦の側もコメントを発表した。「男の子がダウン症だとは知らなかった。心臓疾患があり、一日もつかどうか、と説明された」「タイのクーデターもあったので女の子だけを連れてすぐに帰国した」と証言し、タイ人代理母の説明は「すべて嘘だ」と話している。

双方の意見は真っ向から食い違うが、タイの保健当局は、代理出産に問題がなかったかどうかを調べるため、双子が生まれた病院などに対し、事実関係の調査を始めている。

オーストラリアや日本では代理出産が原則禁止されているが、タイなどの海外で実施する例は増えている。バンコクでは6日、日本人を父親として代理出産で生まれ、ベビーシッターに育てられていた赤ちゃん9人が保護されるなど、事件になる例も出始めている。日本国内で代理出産を限定的に認める法案の提出を目指す議員も出ており、今後、ますます議論が活発になりそうだ。

「自分たちの遺伝子を受け継いだ子供が欲しい」と代理母に依頼する気持ちも分からなくはないが、親子関係が遺伝子のみで決まるという「遺伝子信仰」には問題がある。親子は、生まれてくる前に約束してくるもので、血のつながりがなくても霊的に縁があって家族になるケースもある。日本では不妊で悩む夫婦がいる一方、中絶も数多く行われている。里親に対する理解が進めば、代理母への依頼が必要なくなるケースもあるだろう。

さらに、出産前に障害が判明した子供を生むか否かについてもトラブルはつきものだ。ただそんなときこそ、人間の本質が魂であり、その魂を磨くために繰り返し生まれ変わっているという霊的な視点が必要になるだろう。障害を持って生まれることには、自身の魂修行のためや、周囲に健康のありがたさを教えるためなど、大きな意味があるからだ。

こうした代理出産の議論の際は、「人間の本質は魂である」という前提のもとで、「本当に魂の幸福や成長につながるかどうか」を考えるべきだろう。科学技術が進歩すればするほど、宗教的な視点が必要になってくる。(晴)

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2011年2月19日付本欄 インドやタイの女性が日本人の「代理母」に

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