福島第一原発の事故の後、福島県内で生まれた赤ん坊の先天異常の発生率が、全国平均とほとんど同じ傾向だったことが厚生労働省の研究チームの調査で分かった。日本先天異常学会学術集会で27日に発表された。

研究では、日本産婦人科医会が毎年行っている全国調査のデータと、2011年の原発事故後の福島県内の全分娩施設での調査のデータとを比較。全国のデータは、1997年から2010年に生まれた赤ん坊のうち約122万人、福島県のデータは、11年から13年に生まれた約1万7800人が対象となっている。それぞれについて、1万人当たりの先天異常の発症率を比べた。

妊娠22週から生後1カ月の間に発見された、心室中隔欠損やダウン症、口唇口蓋裂、多指症など、すべての先天異常の発症率に、全国と福島で統計的に意味のある差はなかったという。

福島県内で震災後、流産や中絶が増えたという噂が一時流れたが、実際にはほとんど変わらなかったことが以前から明らかにされている。そのため今回の調査は、全国と同じ条件で比較した。

福島原発事故の後、「奇形のチューリップ」「奇形のタンポポ」などが発見されるたびに「放射能の影響か」などと恐怖心をあおる噂が流れたため、子供への影響を心配する母親は多い。

日本先天異常学会による電話カウンセリングには、妊婦から「このまま福島県内に住んでいて大丈夫か」などの質問が寄せられたという。年間被ばく線量が10ミリシーベルト前後という、放射線による健康被害の可能性が極めて低い地域に住んでいるにもかかわらず、心配のあまり引越を検討している人もいた。

放射線による人体への影響が確認できるのは、短時間に100ミリシーベルト以上を浴びた場合だが、福島県内の被ばく量は、ほとんどの地域で年間20ミリシーベルト未満であり、帰宅困難地域のごく一部で年間100ミリシーベルトを超える程度と、問題にならない量だった。

今回、一番被ばく線量が高かった時期でも、先天異常の発症率が他の地域と同じだったことが確認された。放射能は時間の経過とともに減少していくため、福島の安全性は高まる一方だ。母親の不安をむやみにかき立ててきた一部マスコミは、この結果をきちんと受け止め、自説を訂正しなければならない。(居)

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